2021 Fiscal Year Research-status Report
日中経済摩擦の研究―1917から1944年領事官会議録・領事報告からの検証―
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19K00982
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐藤 元英 中央大学, 政策文化総合研究所, 客員研究員 (70276450)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 領事官会議 / 排日 / 経済摩擦 / 満蒙問題 / 満洲事変 / 日中戦争 / 南洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
領事官会議議事録および排日排貨運動に関する日本外務省の記録をデータベース化するとともに、中国における抗日団体とその活動について研究を進めた。とくに「南支領事会議(広東・厦門・香港・福州・汕頭・雲南)」議事録昭和3年より昭和11年までを調査した。また、排日排貨の実態として日本外務省外交史料館に所蔵されている中国・南洋における排日排貨関係記録(昭和2年から)の文書目録(全37頁、130冊分)を作成した。 例えば、上海における満洲事変直後の状況は、以下のとおりである。 上海 昭和6年9月~同年12月月14日 ・邦炭取引中止ノ件・抗日運動ニヨル経済的影響報告ノ件・上海ニ於ケル反日排貨状況ニ関スル件・満洲事変ニ依ル排日運動ノ概況・在上海邦商取扱貿易品ニ関スル排貨直接損失見積概算ニ関スル件・上海邦人工場調ノ件・満洲事件以後上海ニ於ケル排日状況(其二)・満洲事件ト経済絶交ノ現状ニ関スル件・満洲事件以後上海ニ於ケル排日状況(其三)・排日及日貨抵制ノ実情ニ関スル調書・上海市党部ノ反日的訓令並ニ誓詞ニ関スル件・上海市救国義勇軍章程ニ関スル件・中国経済絶交ト中日貿易関係ニ係ル件・日本問題研究会ノ抗日救国民意試問ニ関スル件・十月中上海ニ於ケル労働争議状況ニ関スル件・抗日救国会編『国日貨対照録』・抗日会ノ暴戻的事例追放ノ件 以上のような中国及び南方における排日排貨運動の具体的事例研究を積み重ねることによって、日中経済摩擦の実態と日本外交の対応を分析することが出来る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日中経済摩擦と反日運動の歴史的展開について、以下のように整理している。 清国時代の排外運動と反日運動:日露戦争後の排日運動、日本の対華21ヵ条に関する交渉が公表されると全中国にボイコット運動が波及した。上海においては「勤用国貨会」が成立して運動の中心的役割を担った。日本の最後通牒を中国が応諾すると、三菱支店が焼打ちされ、日本商店が襲撃される事件が発生、また漢陽日本綿花工場も襲撃された。上海総商会が組織的に排日貨運動を展開し始める。 第一次大戦後の反日運動:1919年には北京の学生団による5・4運動が展開すると、上海にも「全国学生連合会」が組織されるなど排外運動が昂揚したが、パリ講和条約に中国の全権が調印すると、8月以降中国商人の反対もあり排外・排貨運動が漸次衰えたが、11月、在留邦人と排日中国学生との間に福州事件が起こると、北京では「救国十人団」のが組織され、「全国大会」などの開催によって1920年初頭まで、排外運動・排貨運動が展開された。1923年1月、北京行政院において旅順・大連回収案、1915年日支条約取消が可決され、これに対し日本側が拒絶すると、漢口を中心として中支全域に排日貨運動が展開された。この時のボイコット運動の特徴は「排日規約」に基づく経済絶交が組織的になったことである。 その後、国民党及び国民政府指導時代(1931~1934):共産党指導時代(抗日人民戦線時代1935~1936):全国的抗日態勢時代(1936~)と区分する。 満洲事変勃発以降は、国民政府中央党部の下に、上海市党部・上海教育局・上海市商会により、「抗日救国会委員会」「教育会救連会」「大学学生抗救会」「中等学校抗救連合会」「中等青年抗救会」「教職員抗救会」「日商碼頭工人抗救会」「日商緲廠工人抗救会」等々が組織化され、「対日経済絶交方案」、「日貨登記弁法」「日貨保管規則」などにより排日貨運動を指導した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、上海・天津の租界おける満洲事変以後の政策的に組織化された排日貨運動の実態について、以下の組織、法規制などを調査する。国民政府中央党部の下に、上海市党部・上海教育局・上海市商会により、「抗日救 国会委員会」「教育会救連会」「大学学生抗救会」「中等学校抗救連合会」「中等青年抗救会」「教職員抗救会」「日商碼頭工人抗救会」「日商緲廠工人抗救 会」等々が組織化されたこと、「対日経済絶交方案」、「日貨登記弁法」「日貨保管規則」など法的規制により排貨・排日貨運動が展開されたこと、などである。 2、領事官会議録を①在満州領事官会議(哈爾賓・奉天・吉林・長春・間島等総領事館)、②在北支領事官会議(天津・青島・済南等総領事館)③在中支領事官会議(上海・香港・南京・漢口等総領事館、宜昌、沙市・九江等領事館)、④在南支領事官会議(福州・広東総領事館、雲南・汕頭・厦門等の領事館)、の記録群に分類するとともに、第一期1917年~30年満州事変前、第二期1931年~32年満州国の建設まで、第三期1933年~36年日中戦争前、第四期1937~44年日中戦争後の4時期区分に整理する。 3、遼寧省档案館所蔵の「経済調査会」「中国経済月刊」「日満経済ブロック下に於ける満州経済の日本経済に及ぼせる影響」「抗日民族統一戦線運動史」等の資料調査、天津租界における英米仏の金融資本と日本経済との関係調査、などに付いてはコロナ禍のため未着手であるが、本研究に大きな影響を与えるものではない。 4、満州事変後から日中戦争における日満中経済ブロック形成と、英米との経済対立激化の進展を検証することに発展させたい。
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Causes of Carryover |
1、極東国際軍事裁判資料(日中戦争下の反日運動関係)のデジタル撮影に関する業者委託が年度内に終了することが出来ず、支払い約40万円が令和4年度に繰り越されたこと、などによる。 2、出張費、その他の立て替え払いの支払申請書約20万円分について、提出が遅れたため、次年度の支払となった。
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