2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K00991
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
日比野 利信 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (90372234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
季武 嘉也 創価大学, 文学部, 教授 (40179099)
中村 尚史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60262086)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 石炭 / 筑豊 / 北九州 / 企業家 / ネットワーク / 政治システム / 麻生太吉 / 安川敬一郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は研究期間を2年延長した最終年度で、これまで同様に、九州大学の「麻生家文書」整理・研究プロジェクトと連動して、麻生家文書の調査・研究を中心に据えて、特に当主の麻生太吉日記、麻生太吉や麻生家関係者が送付した書簡の草稿集を共同で読み進めながら、麻生家文書の関連資料と、安川家文書・松本家文書の関連資料を合わせて参照する共同研究会を定期的に実施した(全4回)。合わせて、共同研究参加者が適宜麻生家文書やその他の史料調査を実施した。 共同研究会では日清戦後から日露戦後までの麻生太吉や安川敬一郎の動向について、子細に明らかにし、共有することができた。同じく筑豊炭鉱家・企業家である麻生太吉と安川敬一郎・松本健次郎は一致・協力して、鉄道・港湾などの輸送基盤の整備を中心として、筑豊石炭業全体の発展に尽力したこと、他方で、豪農出身の麻生と士族の安川、次世代の松本の考え方や行動様式の違いも見られたことを明らかにした。 全体をとおして、全国的にも屈指の質と量を誇る麻生家文書の全体像を把握し、その内容や特徴を明らかにして、①今後研究を進化させるための基盤を開拓できた。②特に日記や書簡など1次史料を子細に検討して、近代日本の工業化の過程や特徴について、工業化を担った企業家が構築した多様なネットワークとその具体的機能を明示できた。③これまで検討されることが少なかった企業家の政治的活動や役割について、福岡市政との関わりにも注目して明らかにすることができた。 同時に、同じ筑豊炭鉱家でも、豪農出身の麻生太吉と士族の安川敬一郎では個性や行動様式が異なる場合があることを改めて確認し、上記の成果をさらに深化させるための様々な論点を示すことができた。 これらの成果を報告書にまとめて、共同研究参加者や史料保存機関の関係者などに提供し、成果と情報の共有をおこなって、今後の研究につなげた。
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