2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00997
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
伊藤 昭弘 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 教授 (20423494)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 旧藩貸付金 / 藩財政 / 明治初期財政 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、国立国会図書館憲政資料室、国文学研究資料館、福島県歴史資料館、奈良県立図書館、滋賀県立公文書館、佐賀県立図書館において史料調査を実施した。国立国会図書館では、三条実美など明治期の政治家の史料から、旧藩貸付金に関するものを調査した。国文学研究資料館では愛知県庁文書、群馬県庁文書、長田家文書(大坂の大名貸商人、旧丸亀藩関係資料が伝来)、松代藩真田家文書を調査した。福島・奈良・滋賀・佐賀県の各機関では、各県の旧藩貸付金にかんする史料を収集した。また、国立公文書館所蔵の公文書に含まれる旧藩貸付金の史料を再検討し、今後の調査研究の指針作りに用いた。ほか、近世史フォーラム例会にて旧藩貸付金にかんする報告を行い、活発に議論した。 これらの結果、愛知県・滋賀県の史料が良質で、旧藩貸付金の総額や回収状況などが判明した。特に滋賀県は、彦根藩など江戸時代の史料との接続が見込まれる。一方福島県・奈良県については断片的な史料が多く、両県の旧藩貸付金の全容把握は難しいそうである。 また松江・鳥取・佐賀・丸亀藩などいくつかの藩が明治維新期に商社・商会を設立し、それが廃藩置県後の旧藩貸付金の調査や回収に大きく影響していること、明治政府が太政官札を用いて諸藩にばらまいた石高貸付金が関係していることが判明した。これまで分析してきた島根県(松江藩)・山口県(長州藩)とあわせ、次年度以降はこれらの県・藩にかかる史料を検討することで、旧藩貸付金の実態に迫る見通しを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2月および3月に群馬県・長野県・島根県・山口県の文書館・図書館における旧藩貸付金関係史料の調査を予定していたが、新型コロナウイルスの流行により断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの流行が落ち着き次第、群馬県・長野県・島根県・山口県・秋田県・鳥取県・長崎県での資料調査を行い、旧藩貸付金関係史料を全国的に収集する。 群馬県・長野県・秋田県は、旧藩貸付金関係資料の存在が目録などより確認できたため、各県での事態把握のための史料調査を行う。島根県・山口県については以前史料調査を行っており、引き続き関係史料の発掘や、収集済み史料の分析を行う。鳥取県は鳥取藩の明治維新期の史料を調査し、特に鳥取藩が設置した産物の海外輸出を目的とした商社を検討する。 また、令和元年度に収集済みである福島県・滋賀県などの史料を分析し、各県における旧藩貸付金の実態把握や徴収、藩政期における貸付制度の研究を進める。また滋賀県の資料は極めて良質なものであり、彦根藩井伊家文書など近世史料と合わせた分析が期待できる。そのため滋賀県の調査は引き続き実施する。
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Causes of Carryover |
旧藩貸付金に関する史料が伝存している都道府県を調査した結果、計画時よりも多くの府県で確認することができた。そのため史料翻刻など人件費にあてる予定の分を旅費に回し、2月に滋賀県・島根県、3月に群馬県・鳥取県・長野県・秋田県への調査を予定していた。しかし2月中旬からの新型コロナウィルスの流行により、滋賀県の調査を行ったのみで、他の調査を断念せざるを得なかった。そのため次年度使用額が生じており、新型コロナウイルスの流行が落ち着いた後、上記各県への調査を行う予定である。
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Research Products
(1 results)