2020 Fiscal Year Research-status Report
北海道統治と台湾統治との連続と断絶ーー「殖民地撰定」事業を中心に
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19K00998
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 敦 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (80322767)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本統治期台湾 / 明治期北海道 / 台湾総督府 / 殖民地撰定 / 田代安定 / 移民政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度はコロナ禍による勤務校の出張規制により、台湾はもちろん、北海道へのフィールドワークもできなかったため、専ら文献研究を行った。 前年度同様に、「台湾総督府档案」(台湾の国史館台湾文献館所蔵、ネット閲覧可)の「殖民地撰定」事業に関する文書の整理解読を進めた。本年度は特に台湾東部における調査過程を分析し、1897年時点での「台湾総督府档案」における総督府殖産部(総督府本府)の記述と台東庁(地方庁)の記述、そして1899年時点での『台東殖民地予察報文』という刊行物の記述の相違に注意しながら、「殖民地撰定」事業の政策の進行過程を考察した。北海道の殖民地撰定については、『北海道殖民地撰定報文』(復刻版)を、現在の地図と比較しながら読解した。これら成果は令和3年度に発表予定である。 コロナ禍を受けて台湾の有料eジャーナルプロバイダである華藝(https://www.airitilibrary.com/)が、12月まで限定付ながら無料公開を行っていたので、大学図書館を介して利用した。関連論文を探し直し、読み直すのに有益であった。 なおフィールドワークは行えず、東京での調査すらも自粛せざるを得なかったが、出張可能であった神戸において、神戸市立中央図書館が所蔵する『神戸又新日報』マイクロフィルムの記事が有益であることを発見し、読解を進めた。『神戸又新日報』は台湾での窓口となった港町神戸で刊行されていた新聞であり、19世紀末の台湾に関する有力な情報源である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍は年度当初の予想をはるかに上回る状況であり、台湾と北海道へのフィールドワーク、東京への文献収集ともに支障をきたした。 令和2年度は勤務校の中高教職課程の責任者に任じられ、Zoomの運用担当者の1人にもなったため、教育実習の現場混乱や遠隔授業導入を巡る混乱に対して陣頭指揮をせざるを得ず、多大な労力を削がれることとなった。自己の授業をZoomに適合した内容へ作り直す必要もあって、研究時間を十分確保できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度もコロナを巡る見通しは暗く、年度内の台湾フィールドワークは(万一の可能性を考慮して予算執行計画を立てているものの)困難度が高く、北海道フィールドワークについても慎重に判断せざるを得ない。よって令和4年度まで研究期間の延長を申請する予定である。延長が認められば、令和4年度にフィールドワークを行う。 勤務校の中高教職課程の責任者やZoomの運用担当者なのは相変わらずであるが、他の教職員や学生も経験値を積んだため研究時間は確保できるであろうから、文献研究は進展できるであろう。当初計画では令和2年度に予定していた「台湾総督府档案」の分析結果と北海道との比較については、令和3年度に発表予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は国内外を問わずフィールドワークができなかったことと、台湾の有料eジャーナル(人文学分野の年間正規購読料金 US$7,850)を無料で閲覧できたことと、年度末に予定していた資料整理のためのアルバイト依頼(謝金支払い)を令和3年度へ延期したこともあって、支出は神戸への文献調査と既存の撮影画像の処理ソフトウェアの購入程度にとどまり、大幅な繰り越しを生じた。 令和3年度は、謝金支払いは年度前期に令和2年度分も含め執行予定である。文献調査はコロナ状況を見極めながら、神戸での継続調査および、東京への調査を行う。その他からの複写費も調査に伴い支出予定である。 令和3年度もフィールドワークは困難であり、令和4年度への研究期間延長(予算繰り越し)を希望しているが、万一可能となった場合を考えて国内(北海道)はもちろん、国外(台湾)も計画には計上している。
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