2019 Fiscal Year Research-status Report
新出・菩薩半跏像および金石文の分析による古代日本・朝鮮の弥勒信仰の研究
Project/Area Number |
19K00999
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
山崎 雅稔 國學院大學, 文学部, 准教授 (40459392)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 菩薩半跏像 / 弥勒信仰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①歴史研究の方法により史資料を分析し、②美術史的見地から仏像(菩薩半跏像・弥勒菩薩像)の像容を検討することにより、古代日本・朝鮮の菩薩半跏像の造像意義の解明を目指すとともに、海外の美術館が所蔵する仏像(新出資料)について情報収集・研究を進める。 初年度となる2019年度は(1)日本・韓国の仏像に関するデータベース作成、(2)国内・欧米・韓国における菩薩半跏像の像容・弥勒信仰・金石文に関する調査、(3)新出資料(仏像)の所蔵・流出経緯に関する調査、(4)研究会の実施による専門家との意見交換を当初の計画とした。 (1)は日本・韓国のほか欧米・中国の博物館等に所蔵される仏像について、関連する研究論文や修復・売立に関する情報も収集しながらデータベースの構築を進めた。また、仏像に刻まれた銘文や石刻資料、文献資料のデータ入力にも着手し、必要に応じて判読作業を行った。(2)は8月に奈良県内(奈良国立博物館、笠置寺・中宮寺など)で調査を実施し、古代・中世の弥勒信仰の展開、菩薩半跏像の像容について新しい知見を得た。(3)資料を所蔵する美術館の学芸員と連絡を取り、所蔵の経緯やその他の関連情報の提供を受けた。その情報に基づいて海外の美術コレクション等のデータベースの調査を重ねて、美術館に寄贈した人物が当該の仏像を入手した経緯、売主の日本との関係までを明らかにすることができた。(4)は打ち合わせを1度開催し、明治・大正期の古美術資料に関する研究方法について新しい知見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度末に予定していた韓国やヨーロッパ諸国での調査については台風・COVID19の影響により取りやめざるをえず、国内外の調査は計画通りに推進できなかった。しかし、データベースの作成・資料収集は予定よりも捗った。オンラインで公開されているデータベースを活用するなど別の方法で調査を進める機会を得たこともあり、次年度以降、さらに基礎研究を進めていくうえでの土台を十分に獲得できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
COVID19の影響により今年度に予定していた国外調査や研究報告は困難な予想される。そのため、史資料の分析や仏像の像容に関する研究に重点をおきながら計画を遂行しつつ、現地調査の準備を進める。具体的には、2019年度に作成した仏像・史資料のデータベースの補充に努め、文字資料の判読・校訂作業をおこないデータに正確を期し、仏像の造像様式に関する先行研究を整理してデータに反映する。新出資料の出所を明らかにするため、19世紀末から20世紀初頭に日本から流出した古美術(とくに仏像)とその需要傾向を調査し、その学術的資料価値を検討する。現地調査を2020年度後半もしくは2021年度以降に重点的に行うべく、関連する研究情報の収集に努める。2021年3月までに新出資料について中間報告を作成し、公開をめざす。
|
Causes of Carryover |
使用額に変更が生じたのは、COVID19の影響で年度末に予定していた国内・国外調査を中止したことによる。次年度は、データベースの充実を図るため、データ入力を行う雇員の作業時間を増やす。また、年度末に国外(韓国、アメリカ・イギリス・ポルトガル等)での調査を実施する。これらに必要な研究情報(論文・研究書・図像資料)を国内外から取り寄せ、研究体制の一層の整備をはかる。
|