2020 Fiscal Year Research-status Report
縄文時代における情報伝達と物資流通システムに関する基礎的研究
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19K01002
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大工原 豊 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20641202)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 石鏃型式 / 黒曜石流通 / 石鏃の型式構造 / 石鏃の型式変化 / 地域内遊動 / 広域遊動 / 縄文時代の人口 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はコロナ禍の影響により、出張調査をあまり行えなかったが、文献調査と近隣の資料調査を実施し、いくつかの研究成果を得ることができた。 草創期・爪形文段階の群馬地域を中心とする遊動と離合集散についての研究を行った。群馬県赤城山麓の大間々扇状地には、下宿式土器を保有する集団(大間々集団)が居住している。この集団はチャート・黒色頁岩製の長脚鏃(西鹿田型)と黒色安山岩製の側湾三角形鏃という石材・形態の異なる石鏃を使用しているが、前者は河川・湖沼に面した遺跡から多出することから漁撈用として、後者は丘陵麓に存在していることから狩猟用に用いられていたことを推定した。そして季節的に異なる生業活動を行うため地域内遊動していたことを明らかにした。さらに大間々集団は長野県諏訪湖まで広域遊動し、そこに集合した各地の集団と共同で大規模な集団漁撈を行っていたことを推測した。 中期の房総地域の神津島産黒曜石流通と、それを用いて製作された特徴的な大形石鏃(東長山野型)の型式学的研究を行った。その結果、中期前半では内房ルートで黒曜石が流通し、中期後半では外房ルートで黒曜石が流通していたことを明らかにした。また、東長山野型石鏃が中期中葉に出現し、製品と型式情報が房総半島へ広く拡散していったことを明らかにすることができた。その成果は論文として発表した。 晩期中葉に関東地方南西部で出現した飛行機鏃(下布田型)が山梨県から長野県東信地域を経由して群馬北西部へ伝播したことについての調査を、吾妻川流域の石川原遺跡において行った。その結果、群馬地域での下布田型の型式変化を確認するとともに、これから変異した無茎の飛行機鏃(仮称深町型)が東信地域で出現した可能性が高いことを確認した。 晩期前葉の群馬地域の集落の領域と居住人口について研究し、32集落が同時並存し、1000~2000人の人口規模であったことを推計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、文献調査や近隣地域での資料調査が中心となったので、この部分の調査や研究はある程度計画どおり実施することができた。しかし、遠隔地の現地調査を実施することができず、研究集会や資料検討会が行えなかったので、研究協力者間の情報交換や共通認識の形成が不十分となってしまった。さらに、文献調査についても年度の途中から図書館や埋蔵文化財センターが休館になるなどの制約が生じてしまい、研究活動に支障が生じるようになってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究のうち、論文化できる部分については、それを積極的に推進していく予定である。草創期・爪形文段階の研究については、すでに執筆が終了しており、近々発表する予定である。また、晩期の情報伝達と物資流通に関する研究については、いくつかの研究が完了しつつあるので、これらも順次論文発表していく予定である。 研究会については遠隔で実施し、研究協力者間の情報交換と共通認識の形成を進めていく予定である。 コロナ禍が継続しているため、今後も遠隔地への資料調査や、文献調査、研究会などにさまざまな制約が生じることが予想されるため、当初の計画をそのまま推進していくことが困難になってしまう可能性が高い。その中で研究活動を行うことから、従前からの研究成果を集積させ、それを用いることで、できるだけ研究目標へ到達できるように努力する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、調査のための出張が行えなかったことと、研究協力者を集めての研究集会が開催できなかったことにより、旅費が執行できなかった。次年度も同様な事態となることが予想されるため、各地に在住の研究協力者により独自に調査出張を行ってもらうことで、執行を予定している。また、調査には謝金が生じることから、旅費の一部は人件費・謝金として執行を予定している。
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Research Products
(6 results)
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[Book] 縄文石器提要2020
Author(s)
大工原豊・長田友也・建石徹 編著
Total Pages
516
Publisher
ニューサイエンス社
ISBN
978-4-8216-0532-3