2021 Fiscal Year Research-status Report
縄文時代における情報伝達と物資流通システムに関する基礎的研究
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19K01002
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大工原 豊 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20641202)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 縄文時代 / 情報伝達 / 物資流通 / 文化圏 / 文化境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
縄文時代後・晩期の長野県上田市深町遺跡の石鏃及び耳飾の調査を実施した。そして、石鏃では晩期中葉の所謂飛行機鏃など特徴的な石鏃を抽出し、計測及び3D実測を行った。この遺跡の飛行機鏃には、関東地方南西部を中心に分布する既知の下布田型とは形態の異なる有茎の飛行機鏃と無茎の飛行機鏃が多数存在しており、前者は御社宮司型、後者は深町型として型式設定する目途が立った。これらは飛行機鏃の終焉を示すものであり、石鏃の型式情報の伝播を解明する上で非常に重要な資料である。今回の調査により図化することができたことは、大きな成果である。この資料を用いて飛行機鏃の終焉ついて、明治大学黒耀石研究センターの研究集会(2022年3月5日)で研究発表を行った。さらに、周辺地域の資料を渉猟し論文としてまとめる予定である。 また、群馬地域の配石墓(石棺墓)の形態と変遷についての研究を行った。その結果、東北地方北部で中期末葉に出現した配石墓が、長野地域へ伝播し、後期前葉(堀之内2式期)に群馬へ伝播したことを再確認した。また、その後神奈川地域から両端石積み型が伝播したことや、新たに底面石敷タイプが出現したこと、最終的には再葬墓型へ変容したことなどを明らかにした。その成果は、現在研究雑誌に投稿中である。 2022年3月27日には研究協力者14名の参加による本科研事業の中間検討会をリモート開催し、各研究者の実施している研究成果についての進捗状況の確認、情報交換及び質疑応答を行った。研究発表は旧石器(縄文以前)から縄文晩期に至る土器・石器・遺構についての分布状態を中心に多角的に行い、本研究の目標到達の目途をつけることができた。なお、この検討会では最終報告をまとめるための今後の日程について調整・検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初コロナ禍により、研究が遅れ気味であったが、研究代表者と研究協力者が個別に研究を推進し、研究課題の目標達成の目途がついてきた。具体的には、研究代表者は早期前葉の石器製作技法(城山技法)の研究を行い、この技法が西関東を中心に分布していることを明らかにした(2019年発表)。また、中期の房総地域に特徴的に分布する神津島産黒曜石製の東長山野型石鏃の動態についても明らかにしている(2020年発表)。そして、草創期爪形文段階の群馬地域の集団の地域内遊動と広域遊動について明らかにした(2021年発表)。現在、縄文時代後・晩期の配石墓についての論文(投稿中)は2022年5月に刊行予定となっている。そして、今年度には西関東から甲信地域に分布する縄文晩期中葉の飛行機鏃(下布田型・御社宮司型・深町型)の動態についての論文を執筆する予定である。 また、研究協力者に依頼した研究も着実に進展しており、さまざまな時期の遺構・遺物の分布状態とその動態が明らかになりつつある。こうした多様な研究により、遺構・遺物の分布圏や動態が必ずしも連動していない縄文社会の実態が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施できなかった調査・研究については、補足的な調査を行い成果をとりまとめる予定である。 また、これまで実施してきた研究を各研究協力者が推進し、成果をまとめる予定である。そして、時期・地域ごとに総合的に比較・検討を行い、縄文時代の各時期の情報伝達システムと物資流通の在り方について、まとめていく予定である。 年度の後半には研究協力者に参加を求めて、最終検討会をリモート開催し、研究成果をとりまとめる予定である。 得られた研究成果については、ホームページに掲載するとともに、研究成果報告書を刊行し、広く公開する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、調査研究出張ができなかったことがあったので、次年度使用額が生じた。これについては、補足調査に充当するとともに、3D実測図作成委託を行い、資料化のために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)