2021 Fiscal Year Research-status Report
The Study about The Texts of Onmyodo in Ancient and Medieval Japan
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19K01009
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Research Institution | Kwassui Women's College |
Principal Investigator |
細井 浩志 活水女子大学, 国際文化学部, 教授 (30263990)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 暦林問答集 / 陰陽道書 / 暦注 / 賀茂氏 / 中原遠忠 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の学会報告で行った、古谷義昭氏所蔵『暦林問答集』の紹介とその学術的価値に関する検証を、学術論文として公表した。これによって判明した、『暦林問答集』の写本系統の概要と意義については、2020年度の「研究実績の概要」で述べたが、この他にも、賀茂在基本を転写した古谷本祖本は、戦国時代の大和の国人領主(大和国国民)で、歌人としても有名な中原(十市)遠忠の手になるものであり、また遠忠本が新薬師寺や、(近世に入ってだが)法隆寺で転写・所蔵されていることが、古谷本奥書より判明する。遠忠自身も、興福寺門跡大乗院との関係が深く、また東北大学所蔵本の奥書とも併せると、従来は、同じ暦注書(陰陽道書)の『ホキ内伝』とは異なり、仏教的知識とは一線を画すとされた『暦林問答集』が、実際には中世末期に、寺院において広く読まれていたことが明らかとなった。また、本論文の公表によって、慶應義塾大学に、現在行方不明とされていた、文明16年(1484)写本が所蔵されているとの情報を得て、所在を確認することができた。これに加えて、慶應義塾大学には、従来知られていなかった、大永2年(1522)写本『暦林問答集』が所蔵されていることを発見した。以上の研究で得た知見も踏まえて、TIMEJ Online Conferenceにおいて、日本中世の時間に関する報告を行い、日本中世の時間意識について、国際的に紹介することができた。また暦注に関する知見を踏まえて、安倍晴明に関する評伝も公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本事業は、古代・中世の陰陽道書に見える暦注に注目して、各写本間の比較と検討とを行い、それぞれの時期に流布した陰陽道書がどのような過程を経て今日見るようなものとして形成されたのかを明らかにすることを目的としている。この目的に照らすと、現在、『暦林問答集』という、重要な陰陽道書(暦注書)の解明が大きく進んでいるので、おおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
『暦林問答集』の写本については、新型コロナウイルス感染症の影響で、現地調査が困難であるものの、写真撮影を依頼して取り寄せることで、一定の進展を見ている。今後は新写本の翻刻や、調査・検討を進め、『暦林問答集』の普及状況や、写本系統の詳細を追求していく予定である。これによって、中世人の暦に関する意識が明らかになることが見込める。
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Causes of Carryover |
研究自体は、取り寄せた資料と、2019年度の調査で得た資料の検討で予想以上に進んだが、新型コロナウイルス感染症が完全に収束しないため、写本の現地調査ができなかったことにより、旅費が消化されなかったこと、また、実物写本の観察による知見が得られなかったため、それを踏まえての検証が行えなかったことが理由である。次年度は、写本の蒐集を進めるとともに、可能な範囲で実物の調査を行い、『暦林問答集』の普及状況や、写本系統の解明を進めていく。
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Research Products
(4 results)