2019 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮開港後における漁場秩序の再編過程:日本人出漁の影響を通じて
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19K01042
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石川 亮太 立命館大学, 経営学部, 教授 (00363416)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海藻 / 潜水業 / テングサ / フノリ |
Outline of Annual Research Achievements |
近代期の朝鮮近海で生産され日本に輸出された海産物のうち、従来あまり注目されてこなかったが重要なものとして海藻がある。2019年度はこれに注目して生産から流通・小児いたる商品連鎖を明らかにしようとした。その結果、朝鮮産海藻のうちフノリとテングサが国際商品として特に大きな意義をもったことが明らかとなった。これらはいずれも紅藻類の海藻で朝鮮近海に広く分布し、近世期(開港以前)から利用されていなかったわけではないが、開港後に日本での需要が拡大したことによって、急速に採取が増加したものである。フノリは主に工業用の糊料として、テングサは食用寒天の原料として、近代日本で急速に需要を拡大したが、それを下支えしたのが朝鮮からの供給であった。本年度は、生産統計と貿易統計の整理を通じて、この事実を裏付けた。 生産の担い手に目を移すと、朝鮮近海では日本人漁民の活動が拡大していたものの採藻業に進出する者は少なく、植民地期に至っても多くが朝鮮人によって採取されていたことが明らかとなった。しかし保護国期から漁業秩序が日本の漁業法に準拠する形で改変されたこと、また日本の商業資本が朝鮮人生産者を組織するようになったことで、朝鮮人漁民の採藻業にも少なからぬ変化が見られた。また少数とはいえ三重県・大分県からの裸潜業者(いわゆる海女・海士)の出漁が見られたことも明らかになった。こうした現象の具体的な様相については、次年度以後の研究の課題となる。 以上のような研究の結果について本年度は日本および韓国での口頭報告を行った。これを論文として報告することも次年度以後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年秋まではおおむね順調に研究を進展させることができ、研究発表も実施できたが、新型感染症の流行によって2020年の2~3月に予定していた日本国内での資料調査が実施できなかったため「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)新型感染症の流行によって実行できなかった国内での文献・現地調査を実施する。2019年度の研究により、三重県・大分県からの裸潜業者の出漁が文献によって確認できたので、これを現地調査を通じて補強することが優先的な課題である。 (2)韓国での現地調査を実施する。2019年度の研究で海藻類の主産地であったことを確認した莞島郡および済州特別自治州での調査を優先とし、現地研究者と連絡をとって調査計画を立案する。ただし新型感染症流行の影響で、2020年春現在、渡航自体が可能かどうか不確定の状況である。2020年夏および2021年春について計画は立案し、慎重に実施可否について検討する。 (3)万が一、韓国での現地調査が困難である場合は、(1)で述べた国内調査の範囲を拡大して実施する。具体的には、岡山県・香川県など朝鮮出漁者を多く送り出した地方の図書館等で文献調査を実施し、出漁元漁村の現地調査を行う。また東京海洋大学・北海道大学水産学部に関連文献が所蔵されていることが明らかになっているので、これらの調査を集中的に実施することも計画する。
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Causes of Carryover |
予定していたパーソナルコンピュータの購入について対象機器の精査に時間を要したため次年度に繰り越した。また2~3月に予定していた資料調査出張が新型感染症のため中止となった。次年度は、これらを実施することで使用する見込みである。
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Research Products
(4 results)