2023 Fiscal Year Research-status Report
Relationship between Paris and Provinces on the Museum Policy during the French Revolution - Distribution, Deposit and Delivery -
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19K01058
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田中 佳 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (70586312)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ルーヴル美術館 / フランス革命 / 地方 / シャプタル / 美術政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度パリの図書館および資料室で行った地方美術館所蔵作品のカタログや先行研究の整理を進める中で、本研究課題の内容に直接かかわる複数の博士論文(いずれもフランスで提出)の存在を知り、それらの閲覧を試みた。一部のみの閲覧に留まるものもあったが、1801年のシャプタル令に伴う美術品の移動について大まかなプロセスを把握することができた。その中で、これまで考慮に入れていなかった会計史料や修復史料の存在を知り、および特定できていなかった地方文書館所蔵の史料の把握が進んだため、早速夏季に現地への調査旅行を組み込んだ。諸事情により、地方での調査はルアンのセーヌ=マリティム県立文書館とルアン美術館、ディジョン美術館に限定されたが、美術品をめぐる中央とのやり取りに関わる重要な史料を収集することができた。さらにパリの国立文書館では、各地方ごとに整理された史料群を調査した。数が膨大であったため閲覧は完了していないが、これまで断片的にしか収集できていなかった史料を補う貴重な史料群を発掘できたことは、本研究にとって大きな成果であり、引き続き整理と調査を進めていくことで研究課題の解明につながると考えている。 この中で、各地方に送付された作品の数や作家の流派といった、先行研究でも考慮されている視点に加え、作品のジャンルの問題と、それに伴う送付後の各地での対応および中央における作品の取り扱いにも注目すべき点があることが分かった。中央はフランス革命の遺産の平等な分配を旗印として地方に作品を送付したが、実際には作品の数と作家の質、ジャンルの多様性とあらゆる面で明確に差がつけられている。シャプタル令は地方の美術コレクションの形成に重要な役割を果たしたとされるが、それは想像以上に地方の多大なる負担と努力を伴って実現したということが具体的に明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では1801年のシャプタル令により絵画が送付された15の都市すべてについて調査を行うこととしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により外国への渡航がままならない状況となったため、現地調査旅行の計画を大幅に変更せざるを得なくなった。昨年度から調査旅行を再開できたため、滞っていた研究を鋭意進めてはいるが、当初の計画を完遂させることはほぼ不可能な状況にある。ただし、今年度行った先行研究の調査により、地方の史料の中で重要なものの特定ができたため、今後の調査を効率的に行うことである程度遅れを取り戻せると考えている。また地方の史料でパリの国立古文書館に収蔵されているものや、ルーヴル美術館絵画資料室の地方への寄託作品に関する資料でカバーできる部分も多いため、残りの研究期間でできる限りの調査を行い、研究全体の取りまとめを行えるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、今年度の調査で収集した資料や先行研究の整理を進めたうえで、再度フランスへの調査旅行を組み込み、パリ国立古文書館の地方美術館に関する史料群と、ルーヴル美術館絵画資料室の寄託作品に関する資料群で未見の資料の調査を完了させたい。地方への調査については選択的にならざるを得ないが、先行研究等で残存資料が充実していることが分かっている都市を優先させる。 現在、1801年の政令で絵画が送付された全15都市と、翌年に追加で決定された2都市、さらに1811年に送付された6都市分の送付内容について、複数の指標により分類・分析した統合的なリストを作成中だが、来年度は研究の最終年度となるため、引き続き情報収集を行って検証する作業を完遂させるつもりである。 また、これまで行ってきた研究会や学会発表の内容を取りまとめ、学術論文として成果を発表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により2020年度と2021年度に予定していた海外への調査旅行を遂行できず、また国内学会もオンライン参加となったため、旅費が大幅に未消化となっている。2022年度から調査を再開し、その分を旅費に充てることができている。次年度は東京で対面による学会発表の機会があることと、再度の調査旅行を予定している。昨今の航空運賃や宿泊費の大幅な値上がりを考慮すると、残額の大半は旅費として消化されることになると思われる。また研究文献で購入予定のものが複数あるため、残額は物品費にも充てる予定である。
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