2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K01077
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加納 修 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90376517)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アジール / フランク時代 / 教会 / 王権 |
Outline of Annual Research Achievements |
共著者もしくは分担執筆者として参加した3冊の書物のうちの2冊において、フランク時代における国家と教会との関係について研究成果を示した。『論点・西洋史学』においては「中世初期国家論」を担当し、フランク国家の特徴について論点を整理して提示した。『侠の歴史 西洋編(上)+中東編』においては、カロリング朝の君主でカール大帝の息子として「国家」を「教会」とみなして統治を行った「ルートヴィヒ(ルイ)敬虔帝」について、その人生や統治理念を検討した。 フランク時代の教会アジールに関する史料のなかで、教会アジールの権利を擁護しようと努めたサン・マルタン修道院長アルクインに対して、カール大帝が論駁している書簡を詳しく検討した。その際に、この書簡を伝える唯一の写本である、フランス国立図書館所蔵ラテン写本2718番そのものを分析した。この写本は、アウグスティヌスやキュプリアヌスらの神学的著作、ルートヴィヒ敬虔帝のカピトゥラリア(勅令)や、国王証書の書式を集めたとされてきた『帝国書式集』に加えて、当該のカール大帝の書簡を含んでおり、830年頃にトゥールもしくは国王宮廷で作成されたと考えられている。教会に逃げ込んだ犯罪者の引き渡しを求めるカール大帝の書簡が、なぜその時期に、どこで、そして何のために筆写されたかという問いに取り組んだ。考察の結果について英語論文の執筆を進めたが、年度内に完成しなかったため、次年度に完成させ、イギリスの雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はオンライン授業への対応などに忙殺され、体調をやや崩したこともあり、予定通りには研究に集中することができなかったことと、海外の研究者との研究交流がほとんどできなかったことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、アジールの享受者、アジール空間、逃亡者の処遇ならびにアジール違反への対応を軸として、関連する史料の分析を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、とりわけ、国内外への出張と、海外の研究者の招聘が叶わなかったことにある。 次年度の研究費として、引き続き西洋中世初期史関連の史料と研究文献の入手にあてる。また国内で開催される学会において研究報告を行うことを考えているが、現時点では学会が現地で開催されるかどうか不透明である。令和元年度に招聘が叶わなかったソルボンヌ大学教授ブリューノ・デュメジルをあらためて招聘したいが、実現できるかどうかは新型コロナウィルスの状況次第である。
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Research Products
(5 results)