2019 Fiscal Year Research-status Report
The Formation and Transition of the Immigration Communities in the Mississippi Delta during the Early Twentieth Century
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19K01091
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
伊澤 正興 近畿大学, 経済学部, 准教授 (40611942)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 強制労働 / 契約労働者禁止法 / 移民斡旋 / パドローネ制 / 湿地開墾 / プランテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究の準備段階として、南部移民史関連史料の収集や先行研究の調査を行った。収集済み史資料は『移民委員会報告書』、先行研究の論文等、商工業雑誌および地方新聞記事、『合衆国司法省強制労働関連史料(Peonage Files of the U.S. Department of Justice, 1901-1945 )』である。とくにPeonage Files については、26本のマイクロリールからなり、全米中の強制労働の状況、訴訟記録、書簡、報告書が収録されている。これらの史料内容は移民労働者だけでなく、白人労働者や黒人小作農を含む。このため、ミシシッピ・デルタの該当箇所を抽出する作業を要した。これまで南部史において移民研究は十分に進展していなかった。それは、深南部とりわけミシシッピ・デルタの綿作地帯の主要な労働力が黒人小作農であり、センサスをみても9割が黒人小作農であったためである。この数値は他州および州内の農園における平均的な黒人小作率からみても、高い水準であった。 だが、本年度の史料収集によって、包括的な南部移民史研究にむけた準備が整ったといってよい。南部においてマイノリティな存在ゆえに移民の歴史的意義は過小評価されていたが、開拓史や人種関係史や農園経営の観点から分析すると、移民流入のインパクトは農園経営や社会経済に波及したと推察される。 本研究の分析対象はサニーサイド入植地であるが、これらの史料によってサニーサイド入植地の社会経済構造をかなり正確かつ立体的に把握できるだけでなく、同入植地の置かれた状況、すなわち、移民入植地と周辺農園との関係や比較も分析できるようになった。この点は南部移民史を大きく前進させるうえで必要不可欠な成果であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は世界的な新型コロナウイルスの爆発的感染によって当初、2月から3月に予定していたアメリカでの海外史料調査を断念した。しかし、同様の史資料が有料の電子資料の形で閲覧できることを知り、急遽、科研費の前倒し申請を行い、閲覧契約を海外代理店と締結した。その結果、史料としては膨大であったものの、電子資料上の検索ツール機能を活用することでき、史料分類するのに要する時間を大幅に節約することができた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は本研究において現時点で見られない。しかし、次年度、海外史料調査については、現在のところ代替手段を見いだせていない。このため、アメリカ本国の感染状況に応じては研究の進捗に遅れが生じることが予想される。ただ、その場合、現行の史料をもって、一定程度の研究成果が見込まれるため、海外史料調査の予算を繰り越す可能性も考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に取集された史資料を研究成果につなげていく。そこで、第1に、ミシシッピ・デルタへの移民労働の統計的数値を可能な限り算出するとともに、同地における移民流入のインパクトを明らかにしていく。第2に、農園主、移民、政府との間で見解の違いが見られた点に着目する。この点は、入国段階、南部入植段階、数年後の状況の3つ局面に分け、移民入植地の状況を再現していく。すなわち、(1)外国人労働者斡旋業と契約労働者禁止法との関係、(2)移民入植地の状況(医療体制、教会、教育、インフラ等)、(3)入植後数年経過後の状況(移動、自作農、困窮、抵抗、逃亡)の3点に焦点を絞っていく。
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Causes of Carryover |
このたび、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、アメリカでの史料調査を見送った点に加え、在宅ワークになったため、年度末の予算執行を断念したためである。
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