2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigating the transition of dynasties at the end of the Middle Kingdom
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19K01098
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Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
矢澤 健 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (10454191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 作治 東日本国際大学, 経済経営学部, 学長 (80201052)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古代エジプト / 中王国時代 / 王朝交替プロセス / ダハシュール北遺跡 / メンフィス・ネクロポリス / 墓 / 葬送儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
エジプト中王国時代末期における統一王朝の衰退と北部メンフィス地域から南部テーベ地域への中枢の移動、その過程における外来勢力拡大との関係など、当該期の王朝交替プロセスを墓出土資料の考古学的検討を中心に碑文資料や理化学的手法を併用して解明することが本研究の目的である。本研究では、当該期の物質文化や葬送儀礼の①通時的変遷と②共時的関係の2つの視点から交替プロセスを具体化することを計画していた。 ①通時的変遷については、メンフィス地域の中王国時代末期における墓の精密な編年構築を行う計画であり、そのためのダハシュール北遺跡における資料調査と発掘調査を今年度も継続する予定だった。しかし、コロナ禍で現地調査の中止を余儀なくされ、新規資料取得や計画していた放射性炭素年代測定の実施には至らなかった。一方で、2020年2月に発掘した中王国時代第13王朝の墓出土資料の分析を国内で進め、土器の形状から、当時アジア人勢力が拡大していたデルタ地域とそれより南のナイル河谷で物質文化の分断が進みつつあったとする説を補強する材料が得られた。これは②共時的関係の分析に関連する成果である。 また、2019年に発見されたダハシュール北遺跡における中王国時代最大の墓の分析を実施した。墓は盗掘を受けていたが、ファイアンス製、石製、青銅製の小型の遺物群が埋葬室前でまとまった状態で発見された。同種の遺物群は他遺跡でも数多く出土していたが、出土コンテクストが明確な例はほぼ皆無であり、用途が分かっていなかった。遺物群の出土状況、堆積、盗掘作業過程の精査から、遺物群は埋葬室の封鎖の際に置かれたものであると結論づけられた。配置のタイミング、遺物群の構成、他時代の葬送儀礼との類似から、魔除けとしての性格が推測された。中王国時代の葬送儀礼に関する情報として、墓地資料を対象とした本研究にも間接的に貢献する成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響で本年度予定していたエジプト現地での調査を実施することができなかった。また、国内においても担当する授業のオンラインへの移行や他教員の補助業務などに圧迫され、研究活動は当初の計画通りには進まず、既存の調査資料の整理が主となった。ただし、既存の資料の分析から研究実績の概要で述べた成果は得られており、前進はしているため、上記の区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の直接経費の多くは使用せず、次年度での利用に計画を変更した。 次年度ではコロナウイルスの蔓延状況、調査参加者のワクチン接種状況を注視しながら、できるだけエジプト現地調査の期間を延長し、新規資料の獲得と理化学的分析の実施を目指す。 国内では、主に土器の通時的変遷と地理的分布の変化、碑文に記録された人名の地理的分布の変化、碑文に言及された神や文字、碑文の内容の通時的・共時的変化について分析を実施し、年度末に成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で本年度予定していたエジプト現地での調査を実施することができなかったため、本年度の使用額が大幅に減少した。次年度では現地調査の期間を延長し、さらに発掘調査の規模そのものを拡大するため、エジプト現地での滞在費および現地作業員への謝金、遺跡と滞在先を往復する車の賃借費が大幅に増大する。本年度の助成金が合算される次年度予算から、増大した滞在費・謝金・車賃借費の支出を行う。その他、書籍、理化学的分析への謝金として利用する計画である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Brief Report of the Excavations at Dahshur North: Twenty-Seventh Season, 20202021
Author(s)
Sakuji YOSHIMURA, Ken YAZAWA, Jiro KONDO, Hiroyuki KASHIWAGI, Kazumitsu TAKAHASHI, Ketita TAKENOUCHI, Yuka YONEYAMA, Seria YAMAZAKI and Nonoka ISHIZAKI
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Journal Title
The Journal of SHOUHEI Egyptian Archaeological Association, Higashi Nippon International University, Vol.9, 2021
Volume: 9
Pages: -
Open Access
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