2020 Fiscal Year Research-status Report
大阪中心部における5~17世紀の治水・水防遺構と都市形成過程の研究
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19K01120
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
南 秀雄 一般財団法人大阪市文化財協会, 学芸部門, 次長 (70344380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
趙 哲済 一般財団法人大阪市文化財協会, 学芸部門, 主任学芸員 (20344369)
杉本 厚典 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 係長 (70344364)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大阪 / 治水 / 水防 / 灌漑 / 都市 / 古地形 / 発掘 / 河川工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
淀川と大和川河口に位置する大阪は、治水なくして都市の形成・拡大はありえなかった。本研究では、大阪市域で拡充されてきた低地帯での発掘調査の成果をいかし、進展いちじるしい古地形復元とあわせ、考古学・地質学・河川工学の協働によって、大阪中心部における治水・水防の実態を究明する。また、それらが基盤となって、どのように街の形態に影響をあたえ次代に受け継がれていったのか、都市形成の観点から通時代的に明らかにしたい。 当初計画では、Ⅰ(古墳時代~奈良時代)、Ⅱ(古代末~中世)、Ⅲ(中世末~近世初)に対象を3分し、主にⅠを1年次、Ⅱを2年次、Ⅲを3年次に研究し、4年次は総括と報告書の作成にあてることになっていた。 2年次にあたる当該年度は、まず1年次の公開研究会・巡検を受け、奈良時代の三国川(神崎川)開削と淀川の治水事業について論文を公表した。1年次に公表した難波堀江の論文とあわせ、古墳時代~奈良時代の淀川・大和川下流域の治水戦略の方向性を概括的にとらえることに益した。 次に2回の研究会により、上記Ⅱにあたる、中世大阪の沿海開発と治水に関する研究をすすめた。これは江戸時代の新田開発の前提となるもので、川と海が接する地域の灌漑整備をともなう耕地化が、大阪の都市拡大の基盤となり、高潮・津波などの災害から街を守るバッファとなった。大阪の中世以前の沿海部開発の実態は不明で、かつての景観もほぼ失われている。他の地域の事例から学ぶため、先行研究が豊富な瀬戸内・伊勢湾の荘園を踏査した。 また、大阪市内の発掘調査から3地点をえらんでC14による年代測定をおこない、地層情報のデータを増やして古地形復元をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大阪は新型コロナウィルス感染症流行の中心であるため、予定していた治水・水防技術に詳しい考古学研究者の招聘による研究会や、中世史研究者などとの共同・公開の研究会などは見送らざるを得なかった。研究会は中止・延期しつつクローズドで2回開催し、中世大阪の沿海部開発と治水についての研究をすすめており、今年度末に論文として成果を公表する予定である。 これまでのような多人数での巡検はおこなわず、単独行により、大阪府下、尼崎市猪名庄、岡山市旭川河口荒野庄、同吉井川河口南北条・長沼・神崎、名古屋市冨田庄などの踏査を繰り返し、淀川流域の治水や大阪での沿海部開発の研究に活かした。また、人的交流を避けて研究の進展をはかるため、1年次に積み残していた分を含めて外部委託により発掘地点のC14による年代測定をおこない、古地形復元に役立てた。 リモートでも対応しているが、本研究のように、現地でのフィールドワークと各地・異分野の学際交流を柱とする場合、実効をあげる代替法は限られている。発掘遺構に対する突っ込んだ技術史的研究など、本格的に着手できていないものもあり、半年分ていどの遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
① 1~2回の研究会により、中世の沿海部開発と治水についての成果を論文化し、年度末に所属機関の研究紀要などで公表する。また、研究計画の対象Ⅲ(中世末~近世初)も平行して着手し、4年次上半期までにはともかく17世紀まで行き着くことを目指す。 ② 同じく研究会により、当該分野の専門家たちを招聘し、治水・水防関係の発掘遺構に対する技術的な研究をすすめる。感染状況に応じて参画方法は工夫する可能性がある。 ③ 沿海部開発と治水については瀬戸内・有明海沿岸・筑後川下流など、築堤などの治水技術については山梨など、先行研究の豊富な地域を選択し巡検する。ただし、個所数・時期・人数は感染状況に応じて判断する。 ④ 大阪市域の古地形復元をすすめるため、発掘調査資料を選定し、年代測定・珪藻分析などを外部委託により行う。 ⑤ 4年次末に刊行する成果報告書の内容と構成を企画する。
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Causes of Carryover |
遠隔地からの招聘や巡検などの旅費は感染拡大防止のため執行しなかった。データ処理のためのPC等はできるだけ費用をかけずに対応し、他の必要経費に備えた。旅費は感染状況をみて今年度、執行する。
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Research Products
(5 results)