2019 Fiscal Year Research-status Report
古銭や青銅製品の残留応力や組成の特徴から製作年・地域・集団を分類する研究
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19K01130
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
小林 淳哉 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 教授 (30205463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 誠 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 教授 (20210479)
松英 達也 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 教授 (60270352)
中村 和之 函館工業高等専門学校, 一般系, 特任教授 (80342434)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 残留応力 / 古銭 / 元素分析 / 鋳造 |
Outline of Annual Research Achievements |
古銭の主成分元素の濃度分析と、残留応力分析を行ない、古銭の鋳造技術が特徴化することを目的として以下の結果を得た。 古銭の残留応力測定は、試料の表面状態を光学顕微鏡で見出し、その部位に対してX線回折測定することで行なった。試料に照射する特性X線はCuKα線とし、管電圧および管電流は40kV および20mA にした。また、X 線照射領域は多層膜ミラーを用いてφ0.5mm に集光した。検出器には二次元検出器を用い、残留応力測定は露光時間420sec にて回折波形を計測することで行った。 具体的には、元素分析は銅銭の開元通宝、永楽通宝、寛永通宝について文字部分4箇所に対して行い、残留応力は寛永通宝に対して文字部4箇所に加え、周辺部(輪:りん)と中心の穴の周囲(郭:かく)、さらに「寛」と「通」の中間部もまた測定した。残留応力測定での2次元回折像から、古銭の金属組織には粗大な結晶粒が存在していつことがわかった。また、文字部には研削作業がされたことを示す結晶の微細化も起こっていた。本来、残留応力測定では表面に存在する緑青の影響を考慮する必要があるが、測定にあたって研磨は行なっていない。したがって、いくつかの仮定のもとで残留応力値を算出したが、古銭表面全体としては、残留応力に異方性があり、時代や鋳造場所による研削、研磨作業など古銭の鋳造過程での技術的な特徴が表れている可能性がある。 元素分析では開元、永楽、寛永の時代による主成分元素比の明確な時代遷移があることがわかったので、今後は残留応力にどのような影響を与えているかを明らかにして鋳造技術の時代遷移などへも考察を加えていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3種の銭種の元素分析は進んでおり、表面組成から内部組成を空いている回帰直線の導出ができている。また時代背景が異なる古銭に対して元素比の時代推移を明らかにできている。 残留応力測定は、基本データを取るための測定条件の決定が昨年度の目的であった。緑青が存在することで内部と表面の組成が異なる古銭に対して表面研磨しないで残留応力を推定するための仮定条件など決定できた。その上で、研磨、研削過程がどの場所にどの方向から行われていたかというデータを得ることができるようになったので、次年度以降はルーチン的に測定を行い、古銭の種類や組成との相関付けと分類は行える基礎となる手段を確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
銭種を変えて測定する。また同一の銭種でも組成が極端に異なるものがある。元素分析でもこれは鐚銭と推定できるものであったが、鐚銭は明らかに制銭とは鋳造場所や鋳造方法が異なるはずである。これまで一括りに鐚銭と分類されたものにも技術による分類が可能になるか確認していく。 これまでの成果は学会発表を2件、論文を1報投稿する準備を進めている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた残留応力分析のアタッチメントが、測定方法の工夫により必要としなかったこと。年度末の学会参加旅費や登録費、調査費用がコロナウィルス感染拡大でキャンセルになったことにより差額が生じている。 翌年度は、残留応力測定の精度向上のためのパーツの購入や古銭の購入量が増えるので、翌年度分と合わせた額での購入を計画している。
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Research Products
(2 results)