2020 Fiscal Year Research-status Report
研究資源価値向上を目的とする標本情報の復元におけるアーカイブの役割に関する研究
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19K01138
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| Research Institution | Hokkaido University |
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Principal Investigator |
加藤 克 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (50321956)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| Keywords | 大学博物館標本 / アーカイブ / 研究資源 / 標本史 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、所蔵哺乳類標本及び付属ラベルの写真撮影とラベルごとの記載内容のデータベース登録を実施し、アーカイブ・過去の研究結果との照合、コレクションとしての採集情報の復元のための基盤整備を行った。
整備されたデータにより、（1）従来動物学標本として管理されていたセーム皮資料が、1877年に開拓使の函館製革所で製作された試作品であること、これが開拓使の東京出張所に見本品として送付され、東京仮博物場で展示されたのち、札幌農学校の標本室の資料として移管されたものであること、1884年に札幌博物場と標本室が統合されたことにより現在に至ったものであることを明らかにした。当該資料の製作・収集過程が明らかになったことで、研究資源としての価値が向上するとともに、北海道の産業史を語る材料としての価値が見出された。また、（2）ネズミ科標本を対象に、当該資料がどのような研究のために採集されたものであるのかを解明するために、関係する研究者の発表論文、報告等と照合することで、標本に付属する不十分な採集情報を補ったり、誤って記載されていた情報を修正した。同時に、発表論文の記述と標本やアーカイブの情報との間に存在する齟齬、矛盾、あるいは研究の進展により修正されるべき事項について整理し、目録として利用できる報告を作成した。この結果により、500点ほどのネズミ科標本に対して「研究の証拠」としての記録が付与され、大学博物館所蔵標本としての価値を向上させたこと、あわせて欠落していた採集情報が整備されたことで今後の研究利用の促進に寄与することになった。また、本調査の過程で、太田嘉四夫による採集標本の一部が京都大学総合博物館に所蔵されており、これと連携させることで研究の再検討を適切に行いうることを明らかにした。今後コレクションの統合を図り、研究資源としての利便性向上の道筋を示したことも重要な成果である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標本及びラベルデータの撮影とデータベース化は、剥製と毛皮資料については終了し、骨格標本についてはおよそ半分が終了した。これはおおむね計画通りに進んでおり、次年度前半にはすべての資料に対する処理が終了する予定である。
アーカイブと標本との照合作業はネズミ科が終了し、その他の齧歯類、食虫類、食肉類についても調査を開始しており、これもおおむね計画通りである。なお、本研究によってアーカイブが適切に整備されたことにより、元博物館長の阿部永から写真資料などの追加寄贈を受けた。当初計画段階では想定していなかった対象であるが、所蔵標本に関わる中核的なコレクターによるアーカイブであり、整理を進め標本との照合の材料とするための整理体制に着手した。
京都大学総合博物館所蔵標本の調査については、計画段階では調査対象としていなかったが、北大所蔵標本とアーカイブ、論文との照合の結果、アカネズミ類の不在が認められたことにより、北大動物学教室でアカネズミ類の研究を行っていた小林恒明の採集所属先である京都大学の調査を実施したものである。
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| Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、すべての標本データの採集及び登録と追加されたアーカイブのデジタル化を実施し、今後の研究利用に寄与する博物館資料情報の整備を終了する。並行して、今後の目録刊行、データベース公開に向けた標本データと画像の管理体制を構築する。
標本情報を整備した上で、ネズミ科以外の分類群を対象にして情報の照合を継続して実施する。特に、食虫類の調査にあたっては、北大標本の重要な採集者である折居彪二郎の採集標本を所蔵する山階鳥類研究所の標本とアーカイブの調査を実施し、北大関係者以外による採集情報の復元を試みることとする。
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Research Products
(2 results)
