2019 Fiscal Year Research-status Report
占領統治期の沖縄で採集された生物標本 - その探索と活用に向けた研究
Project/Area Number |
19K01152
|
Research Institution | Administrative Agency for Osaka City Museums |
Principal Investigator |
石田 惣 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立自然史博物館, 主任学芸員 (50435880)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 自然史標本 / 沖縄戦 / 標本記録 / 生息地推定 / 保全 / 科学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ国内の複数の自然史系博物館の収蔵データベースから、占領統治期(1945~1971年)の沖縄県内で採集された生物標本の探索を行った。この過程で対象標本の収蔵点数が比較的多いと判明した機関のうち、フィラデルフィア自然科学アカデミー及びスミソニアン国立自然史博物館を選定し、2019年12月に訪問して標本調査を行った。今回の調査では沖縄戦における本島上陸から武装解除頃までの期間に米軍が行った標本収集活動に着目することとし、1945年に沖縄島及び周辺島で採集された標本を調査対象とした。調査は各標本についてラベル及び同定のチェックを行い、必要に応じて写真撮影を行った。また、資料担当者にヒアリングを行い、データベースに登録されていない標本の探索にも努めた。フィラデルフィア自然科学アカデミーでは軟体類(主としてイモガイ科及び淡水貝類、約30点)、スミソニアン国立自然史博物館では甲殻類(主としてヤドカリ類及びカニ類、約50点)、棘皮類(約10点)、軟体類(約90点)、両生爬虫類(カエル類約130点、ヤモリ類約80点、トカゲ類約130点、カメ類7点)を調査した。また、スミソニアン国立自然史博では資料担当者の協力を得て採集時のフィールドノートデータの探索も行い、両生爬虫類の一部のコレクションについてデータを発見し入手した。 これらのラベルデータの内容から、特に米海軍第2医学研究部隊(NAMRU-2)の活動に伴って採集された標本の多いことが判明した。特に両生爬虫類については同部隊の複数の班が関わった形跡がラベルデータから読み取れ、採集地点数も多いことから、部隊の活動記録と突き合わせることにより標本の収集目的やその活動を再現できる可能性のあることがわかった。それぞれの種同定については現地調査で完了できなかったものがあり、引き続き進める必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では1年目の主な調査項目としてアメリカ国内の博物館が収蔵する標本の探索と現地収蔵庫調査を挙げていたが、この点についてはほぼ計画通りである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目以降にもアメリカ国内の収蔵庫を訪問して標本調査を行う計画を立てていたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、現時点では海外渡航が可能となる時期が見通せない。また、アメリカの大半の博物館の業務再開は早くても夏以降になるという観測情報も得ている。そのため、当面はオンラインデータベース上での標本探索、昨年度調査した標本のうち同定できていないものの同定作業、米海軍第2医学研究部隊の活動記録の探索、を中心に進めつつ、現地訪問が可能となった段階で収蔵庫調査の調整を図ることとする。標本の目録作成については若干の遅れが生じる可能性がある。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額は当該年度直接経費総額の3%に満たない額であり、誤差の範囲である。
|