2021 Fiscal Year Research-status Report
Memories of Place/Politics of Place at the Island of Lampedusa in the Mediterranean Sea
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19K01185
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
北川 眞也 三重大学, 人文学部, 准教授 (10515448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ランペドゥーザ / 境界 / 場所 / 地中海 / 移動性 / 記憶 / 惑星都市化 / 批判地政学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ランペドゥーザ島に関わる成果として、「ランペドゥーザ島――モノが照射する境界化の政治」(山﨑孝史編『「政治」を地理学する――政治地理学の方法論』所収)、「批判地政学と安全保障――地政学をローカルに考えて見えてくる世界の複雑さ」(南山淳、前田幸男編『批判的安全保障論――アプローチとイシューを理解する』所収)を公表した。 前者では、ランペドゥーザ島に到来し、経由し、立ち去っていく移民たちの存在が、この島の場所の記憶の形成といかに関わっているかを、移民たちの船という物体に注目して明らかにしようとした研究の調査プロセスを振り返りつつ、その論点をあらためて明確にした。後者は、地中海を渡る移民と、ランペドゥーザ島の住民が置かれている状況を、批判地政学という研究領域から検討したものであり、さらなる研究への見取り図であるとも考えている。 また、「惑星都市化、インフラストラクチャー、ロジスティクスをめぐる11の地理的断章――逸脱と抗争に横切られる「まだら状」の大地」(平田周、仙波希望編『惑星都市理論』所収)を公表し、そこにおいては、「惑星都市化」、「インフラストラクチャー」、「ロジスティクス」という3つの理論的視座からヨーロッパの各地で起こる抗争を検討したが、ランペドゥーザ島が移民の移動に対する境界として安全保障化されていく過程で、住民の生活がそうした過程に包摂されていく際の緊張について論じた。 またこの論考を受けた上で、「ふたたび都市を争点とするために 2」(http://www.ibunsha.co.jp/contents/planetaryurbanization02/)と題して、平田周と仙波希望との対話を公表した。ここでは、離島とでも言えるランペドゥーザ島の状況が、あらためて都市化、特に惑星都市化という問題系とどのように関わるのかをあらためて考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響で、2021年度は現地調査を行うことができなかった。2019年度、2020年度に続いてのことである。研究計画上で現地でのインタビュー調査を基本としているため、現状は「遅れている」とせざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も同様に、ランペドゥーザ島の現地調査を考えてはいる。しかし、多くの人びとへのインタビューを繰り返す調査は難しいように思えるのと、何より、当初の研究計画の内容を完全に実現するのは、残りの時間からするとかなり困難であると感じる。ゆえに、これまでに蓄積してきたランペドゥーザ島の資料やデータを、オンラインを活用したすでに知っている人への補足的インタビューや資料入手を行いつつ、場所や境界、批判地政学やインフラストラクチャー、ロジスティクスをめぐる昨今の議論のなかで検討・分析していくことに研究方向を修正することも考えている。
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Causes of Carryover |
今年度も引き続き、新型コロナウィルスのために、イタリアで現地調査を行うことができなかったことが大きい。費用は今後、可能であれば現地調査に用いるが、他にも地理学をはじめ関連領域の図書・資料購入、パソコンの購入において使用する予定である。
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Research Products
(3 results)