2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01192
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池 俊介 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30176078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井田 仁康 筑波大学, 人間系, 教授 (20203086)
山本 隆太 静岡大学, 地域創造教育センター, 准教授 (80608836)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地理教育 / コンピテンシー / カリキュラム / 資質・能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、人間の全体的な能力である「コンピテンシー」に関する研究と、それにもとづくカリキュラムの開発が教育界の国際的な潮流となっており、日本の教育界にも大きな影響を及ぼしつつある。そこで本研究では、コンピテンシー開発の先進地域であるヨーロッパ諸国を対象地域として取り上げ、地理教育におけるコンピテンシーに関する分析・考察を進め、その成果をもとにコンピテンシー育成を軸とする日本の学校教育に適合した地理教育カリキュラムを検討することを目的としている。 2年目に当たる令和2年度は、令和元年度に引続きコンピテンシー重視の地理カリキュラムが実施されているイギリス・ドイツ・ポルトガルの現状と課題の把握に努めるとともに、日本の学校教育に導入しうる地理コンピテンシーの内容を検討した。その結果、イギリスでは、コンピテンシーの育成と専門的知識の獲得のバランスを重視するジオ・ケイパビリティ論の展開が活発化しており、諸外国の地理教育関係者の注目も集めていることが分かった。しかし、すでにコンピテンシーが地理教育における中心概念となっているドイツでは、ジオ・ケイパビリティ論はイギリスのような大きな潮流とはなっておらず、コンピテンシーの育成を重視した地理教育は、それぞれの国の教育事情の違いを反映する形で多元化の様相を呈していることが明らかとなった。 その一方で、ジオ・ケイパビリティ論の拡大が見られないドイツにおいても、イギリス発祥の学習手法である「ミステリー」が、地理的知識と一般的コンピテンシーの育成を両立できるアクティビティとして普及しつつあることが分かった。また、ポルトガルではコンピテンシー育成の観点から「フィールドワーク」が再評価されるとともに、その普及活動が積極的に展開されている。このように、コンピテンシー育成のための具体的な学習方法についての関心が各国で共通して高まっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度もヨーロッパ各国における現地調査の実施を予定していたが、コロナ禍により現地調査の実施が困難となった。しかし、令和元年度の研究を通じて築いた人脈を活用することで情報収集を一定程度すすめることができ、各国における地理コンピテンシー研究に関する最新の動向と課題を想定していた以上に把握することができた。特に、コンピテンシー育成を目的とした授業レベルでの学習手法についての検討が進みつつあることを明らかにできたのが今年度の大きな成果であった。例えば、ドイツでは思考スキルの育成と一般的コンピテンシーの育成を同時に図ることができる優れたアクティビティとして「ミステリー」が普及しつつある。また、ポルトガルでは探究スキルの育成とともに一般的コンピテンシーや市民性の育成にも役立つ「フィールドワーク」の再評価と活性化のための全国的なプロジェクトが進めれらている。このように、ヨーロッパ諸国ではコンピテンシーを育成するための学習方法に関する議論が活発に展開されており、日本の地理教育におけるコンピテンシー研究の方向性を考えるうえでも参考となる多くの知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、ヨーロッパ諸国におけるコンピテンシー研究の事例について資料・情報を引続き収集する必要があり、令和3年度も可能であれば現地調査を実施する予定である。しかし、コロナ禍により現地調査が困難となった場合は、代替措置として現地の研究者の協力を得ながら国内で資料・情報収集を行う予定である。これらの研究成果を研究代表者・研究分担者の間で共有し議論を重ねることを通じて、日本の現状に適合した地理コンピテンシーおよびカリキュラムについての検討結果をまとめて行く。
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Causes of Carryover |
海外での資料・情報収集に必要な旅費の支出を予定していたが、コロナ禍により渡航が困難であったため未使用額が生じた。この未使用額については、現地調査が可能であれば、令和3年度の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(12 results)