2022 Fiscal Year Research-status Report
リモートセンシングおよびGISによるニヴフの植物資源採取における空間利用の解析
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19K01240
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Research Institution | Hokkaido Museum |
Principal Investigator |
水島 未記 北海道博物館, 研究部, 学芸主幹 (70270585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹菊 逸治 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 准教授 (80397009)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 民族植物学 / 植物利用 / サハリン / アムール川河口域 / 湿原 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画では初年度から3年目にかけてサハリン北部およびアムール川河口域での現地調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行などにより実施できなかった。その代替調査を可能であれば4年目(令和4年度)に実施したいと考えていたが、引き続き感染症流行は終息せず、また、さらにロシアのウクライナへの軍事侵攻により、実施は絶望的となった。 このため当年度は前年度までと同じく、サハリンおよび隣接地域の自然環境および自然利用文化等に関連する情報、リモートセンシングおよびGISに関連する技術的な情報、ニヴフおよび近隣の先住民の伝統文化に関する情報についての収集を続け、適切な分析手法等に関して検討した。 自然環境に関しては、隣接地域も含めた植物相および植生のみでなく、これと密接に関わる動物相および生態に関する情報を含む。また、石狩平野および北海道東部を対象として、北海道内の湿原の植物相および生態系に関する現地調査を行った。文化に関しては、当該地域の諸民族の自然利用文化、さらには言語や生活文化等まで含めた広い範囲の情報を、これまでに入手した文献等から収集し、関連する知見を深めた。 研究代表者の所属博物館において令和3年度に開催した特別展「あっちこっち湿地」は、北海道と近隣地域の湿原の自然史と人との関わり等について紹介する内容であったが、感染症流行の影響で8日間しか公開できなかったため、令和4年度末から5年度にかけてあらためて規模を縮小して企画テーマ展「もっと! あっちこっち湿地」として開催した。この中で「サハリン先住民族の暮らしを支えてきた湿原」というコーナーを新たに設け、ニヴフをはじめサハリン先住民族の植物採集の場として最も重要な湿原に関して、その環境や利用する植物、利用法等に関して、過去に採集した実物標本および写真を多数用いて紹介することで、研究内容に関する一般市民への普及に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画では4年間で3回計画していた現地調査がまったく実施できず、現地データが得られなかった。これは、上記のとおり世界的な新型コロナウイルス感染症の流行およびロシアのウクライナ侵攻によりロシアにおける自由な調査が事実上不可能な状態が続いているためである。 また、昨年度の時点で過去のデータを用いた代替研究手段についても検討するとしていたが、これに関しても検討に留まり、実施には至らなかった。 関連情報の収集は進め、分析に向けての下準備は引き続き行えたが、研究期間全体として「遅れている」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目が終了した段階で全体のスケジュールを見直し、現地調査として3年目(令和3年度)にサハリン北部、4年目(令和4年度)にアムール川河口域での調査を実施する予定としたが、上記のとおりこの頃から世界的な新型コロナウイルス感染症の流行が顕著になり、4年目までに現地調査は1度もできなかった。このため、研究期間を1年延期することとした。 一方で、現在新感染症の流行は一旦終息を迎えたが、ロシアのウクライナ侵攻は長引いており、現地調査の実施可能性については昨年度以上に見通しが悪くなったと判断できる。 令和5年度も現地調査は不可能である前提で、精度は落ちるものの、現地調査を行わない代替研究手段について早急に検討し、その手段を用いた分析を進める。具体的には、北海道内のサハリン北部の湿原に近い植生の場所での調査、過去にサハリンで撮影した写真をground truth dataとして用いた解析などを想定している。また、過去の調査の際に録音・録画したデータのうち未分析の情報も、デジタル化などにより活用しやすくした上で、翻訳し、分析に用いる予定である。
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Causes of Carryover |
世界的な新型コロナウイルス感染症の流行およびロシアのウクライナ侵攻によりロシアでの現地調査が実施できなかったためである。 上記のとおり、現地調査を行わない代替手段を用いて研究を進める計画であり、そのため、次年度の使用額は、北海道内の湿原における野外調査、より高精細な衛星画像の購入、過去のデータを用いたリモートセンシング分析、過去の調査の際に録音・録画したデータのデジタル化および未分析の情報の翻訳等に用いることを計画している。
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Research Products
(1 results)