2023 Fiscal Year Annual Research Report
A comparative law study on the Judicial Yuan Interpretations in Taiwan
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19K01257
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
徐 行 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (30580005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸谷 義治 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (10643281)
児玉 弘 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (30758058)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 比較法 / 台湾法 / 司法院大法官解釈 / 憲法法廷 / 憲法訴訟 / 憲法解釈 / 司法解釈 / 判例 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は台湾の大法官会議・憲法法廷の運用実態を解明し、日本・中国との比較を通じて、法秩序の形成や法の支配と人権保障の確立・深化におけるその役割を明らかにすることである。 2023年度は台湾への調査訪問が可能となり、裁判官・弁護士へのインタビューのほか、司法院院長に対する聞き取り調査も実施した。大法官の選任、その政治的立場、憲法法廷へと改組された2022年以降の大法官の業務内容の変化等に関する貴重な意見を聴取できた。特に事件数が劇的に増加したため、受理するかどうかの審査に多くの時間を使わざるを得ず、大法官全員が草案の作成に関わる大法官解釈と違って、憲法判決は担当大法官によって起草されるようになって負担減となったが、全体的に見ると仕事量が増えており、日本の最高裁事務総局のような支援機関もなく、事件処理の効率化が課題となっている。 また、憲法法廷が下した判決は計42件に増加したため、引き続き事例分析を行い、違憲・一部違憲や大法官解釈の変更といった既存のルールに対する修正が積極的に行われているという傾向が一層顕著になったことを確認できた。 台湾では選挙によって定期的な政権交代があり、時の政権に配慮することなく判断を下せると指摘されているが、大法官の任期は8年で、再任することはできないため、8年以上の政権が続くと、大法官全員が同じ政党の総統の指名を受けて任命されるという事態は起こり得る。現在の大法官はまさに全員民進党の総統の指名を受けて任命されており、一部の判決では積極的に政権に同調する姿勢を示している。人権擁護への寄与として評価できる側面もあれば、政治的中立性について批判を受けることは避けられない。 日本や中国の最高裁判所と違って、憲法裁判所として積極的な憲法判断が期待されている台湾の大法官は、今後も政治的中立性に関するジレンマを抱えて人権保障の砦として活動せざるを得ないだろう。
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Research Products
(10 results)