2021 Fiscal Year Research-status Report
効果的な再犯防止を実現するための改善指導のあり方についての総合的研究
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19K01340
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小名木 明宏 北海道大学, 法学研究科, 教授 (60274685)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 刑法 / 再犯防止 / 犯罪予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、最近の我が国の立法状況と実務運用の現状と課題を国際的な視点からの検討しながら考察し、効果的な再犯防止を実現するための改善指導のあり方を検討することである。3年目は、自らが意図せずに加害者となる事案に着目し、それゆえに、自らの犯罪に向き合うことの難しい事案、すなわち改善が難しい事案について以下のような研究実績をあげた。 (1)北大刑事法研究会において「いわゆるすり替え型キャッシュカード窃盗の事案において、被害者方のインターホンを押した時点で窃盗罪の実行の着手を認めた事例」と題する報告を行ない、刑法解釈論のみならず、刑事政策的観点からの分析も行った。本件は少年事件であり、行為者は組織的に利用された側面が強いものである。 (2)「GPS機器の利用に伴う刑事法的違法性のパラレル構造」寺崎嘉博先生古稀祝賀論文集下巻(成文堂、2021年12月)437-446頁において、GPSの濫用について検討し、ストーカー規制法の処罰の間隙をどのように埋めるかを論じた。論文公表後、これについての立法の手当てがなされ、時機を得たものとなった。とくに本論文は、民間人と公的機関によるGPSの利用の違法性の問題を総合的に検討した視野の広い、意欲的な論文となっている。 (3)研究全体としての遂行状況に関しては、2020年4月以降の新型コロナウイルス感染拡大防止のため出張が制限され、個別の意見交換の機会が実現できなかった。また、継続的に実施している少年院での再犯防止啓蒙活動も、同じ理由で一度も実現できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでに論文の公表とシンポジウムでの口頭報告を実施できたので、研究成果の公表は断片的に実現できた。 他方、2020年4月以降の新型コロナウイルス感染拡大防止のため、日本刑法学会はオンラインでの開催となり、ドイツ刑法学会は今回も中止となり、多面的な情報交換が全く実現できていない。また、同じ理由で、ドイツ、オーストリアの実地調査が実施できていない。さらに、感染予防の見地から、少年院での実践教育としての再犯防止啓蒙活動が一切実現できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大による出張制限が解除され次第、ドイツ、オーストリアで現地視察と意見交換を実施する。とくに、これまでに公表されたドイツ語による論文があるので、これをもとにプレゼンテーションを実施する。 オンラインによる意見交換も検討しているが、現実に会話するのとでは格段の違いがあり、できれば、対面による意見交換を実施したい。 少年院での再犯防止啓蒙活動も、新型コロナウイルス感染拡大の状況に依存しており、状況を見守りたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う出張制限により、国内出張ならびに海外出張が実施できず、旅費等が未使用であったためである。 使用計画としては、新型コロナウイルス感染拡大により実施できなかった海外出張のための旅費や研究に必要な書籍、資料の購入費用などに充てる予定である。
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