2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01439
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
宍戸 圭介 岡山商科大学, 法学部, 教授 (10524936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟屋 剛 岡山商科大学, 法学部, 教授 (20151194)
加藤 穣 石川県立看護大学, 看護学部, 准教授 (20727341)
張 瑞輝 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (70732246)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 診療拒否 / 応招義務 / 臓器移殖 / 宗教的拒否 / メディカル・ツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、診療拒否の許容性の問題について、近年新しく登場した具体的ケースに着目して考察を及ぼすものである。従来、このような問題は医師法上の「応招義務」の問題として議論されてきた。そこでは、患者に生命の危険があるなど①緊急性があり、しかも診療拒否の結果、患者の死亡などの②重大な損害が発生している裁判例の検討が行われてきた。ところが、近時、上記①や②を欠く事例が現れている。具体的には、A. 海外で移殖を受けた患者が、国内でアフター・ケアを拒まれる事例、B. 宗教的信条から輸血を拒む患者に対して、輸血の必要性がない治療についても輸血同意書を確認させるような事例が挙げられる。我々は、このような「新しい診療拒否」に伴う倫理的・法的・社会的問題(Ethical, Legal and Social Issues = ELSI)につき、学際的に調査・考察を行う。そこにおいては、法的な妥当性/非妥当性を検討するだけでなく、倫理的・社会的な問題をも指摘し、日本の「応招義務」のあり方についても提言を行うことを目指している。 令和元年度は、予定どおり2回の研究会をシンポジウム形式で実施した。 1. 「修復腎移植・渡航移植と応招義務」(第6回釧路生命倫理フォーラム、令和元(2019)年8月10日):いわゆる修復腎移殖の問題に携わった研究者、海外で移植を受けた患者の問題に詳しい医師、国際的な渡航移植の問題について活動を行なっている方々等をお招きし、国際シンポジウムを開催した。 2.「信仰と診療拒否」(第24回岡山生命倫理研究会、令和2(2020)年2月15日):エホバの証人より担当者をお招きしご報告をいただいた。また、現役の開業医の先生からも、応招義務の問題につき、日頃感じられていること等をお話しいただいた。 いずれも当事者の声を聞くことができ、有益であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のとおり、当初の予定どおり2回の研究会を開催することができた。しかしながら、研究のためのフィールド調査や、成果報告を全体的に見ると、やや遅れが生じている。 1. 調査について:研究代表者が勤務校で役職者となったこともあり、長期の出張(特に海外出張)が難しくなっている。その上、年度末には、感染症対策の観点から、県外への出張禁止が求められた。そのため、関係者・関係機関への視察調査については、計画が一部実施できていない。 2.成果報告について:令和元年度は、本研究課題に関係する報告・講演を、研究代表者は4本行なった。また、研究分担者も国内外で複数回報告を行なった。本数だけを見れば、相当数の成果報告があったと言える。しかしながら、これまでに行なった調査データの量を鑑みれば、まだまだ不十分に思われる。特に論文等の出版は、かなり遅れている。研究代表者も、判例評釈を執筆したのみであり、執筆ペースが上がっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症対策の関係で、令和2年度のフィールド調査(特に海外調査)の実施は、ほぼ絶望的である。このうちいくつかは文献調査に切り替えつつ、オンラインで情報収拾を行う方法も検討する。 対面での研究会の開催も、当面は断念せざるを得ないだろう。研究代表者・研究分担者の各々が、所属機関に導入されているオンライン会議システムを利用可能か(相互接続可能か)調整を行う。 収集済みの資料が一定程度の分量となっている。特に、上記A.渡航移植患者の受入れの問題に関しては、成果報告が遅れているものがある。研究分担者とも相談・調整の上、可能な限り早くアウトプットできるよう努める。
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Causes of Carryover |
令和元年度に助成金の一部が使い切れなかった理由は、研究分担者が準備中の原稿に関して、英文校正を年度末に行った際に若干の端数が生じてしまったことにある。 令和2年度は、当初に予定していたフィールド調査や学会報告が困難となることが予想される。とりわけ国外での学会参加は、非常に厳しいものとなるだろう。今後、状況を睨みつつ計画を見直していく必要がある。具体的には、上記準備中の原稿と併せて、現在手許にある資料の分析・検討および成果報告を(予定していたフィールド調査等に)先行して行うことが考えられる。
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Research Products
(8 results)