2019 Fiscal Year Research-status Report
Bayesian Time Series Analysis of Limit Order Processes in Financial Markets
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19K01592
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中妻 照雄 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90303049)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金融高頻度データ / 指値注文 / 継続時間モデル / ベイズ統計学 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金融市場における資産価格形成の解明を目的とし、指値注文(売買価格を指定する注文)の発生メカニズムを説明するための新しいモデルを提案するとともに、提案モデルを推定するための新しいアルゴリズムの開発を目指してきた。本研究で提案する新モデルの大きな特徴としては、注文発生間隔のモデルに1日の取引時間中の周期的変動パターン(日中季節性)、市場に出されている指値注文の状況(板情報)を活用する点が挙げられる。 2019年度の研究では、まず金融市場における注文間隔のモデルとして広く使われているACD (Autoregressive Conditional Duration) モデルに日中季節性と板情報を反映できるように拡張し、この新モデルをマルコフ連鎖モンテカルロ法でベイズ推定するアルゴリズムを開発した。この新アルゴリズムの有効性を人工データで確認する作業を進め、新モデルを安定して推定できるところまでプログラムの調整を行った後,東京証券取引所における個別銘柄の日中取引データを利用して新モデルの実用性の検証を行った。その結果、板情報を用いた流動性の指標が約定間隔に有意に効いていることを発見した。そして,モデル選択規準によって様々なACDモデルの設定を比較したところ,板情報を反映させたモデルが最も優れているという結果を得た。 この研究成果を本プロジェクトの研究協力者である大学院博士課程の学生2名を発表者として2つの国際大会(EAC-ISBA2019とCFE2019)においてポスター報告を行った。学会報告で受けたフィードバックを反映させつつ、現在、研究成果をワーキングペーパーの形にまとめるべく作業を進めているところであり、近々査読付き学術論文に投稿を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日中季節性と板情報を反映させたACDモデルをベイズ推定するためのアルゴリズムの確立は、本研究において最初に達成しておきたい課題であった。研究協力者と共同作業を進める中で、試行錯誤を繰り返して様々な工夫を凝らしてプログラムを改良した結果、2019年度中に安定して動くプログラムを稼働させてACDモデルのベイズ推定を実行できるところまで辿り着けた。したがって、想定したペースで作業は順調に進んていると考えられる。 しかし、マルコフ連鎖モンテカルロ法には計算時間が長くかかりすぎるという欠点があり、しかも現在コーディングに使用しているPythonはお世辞にも実行の速いプログラミング言語とは言えないため、モデルの推定と検証に相当の時間を費やすことになっている。このままPythonを使い続ける限りプログラムの高速化は難しいと判断し、もっと高速の言語として知られているJuliaにプログラムを移植し、プログラムの高速化を図る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ACDモデルの研究が一区切りついたことで、次の課題はSCD (Stochastic Conditional Duration) モデルとの比較に移ることになる。日中季節性と板情報を反映させたSCDモデルについては、既にベイス推定のためのマルコフ連鎖モンテカルロ法のアルゴリズムをほぼ完成させているため、スムーズに両者の実証研究に入れると思われる。Juliaによるコーディングを研究協力者と進め、2020年度内の早い時期にACDモデルとSCDモデルの比較検証を行える体制を整えたい。 Pythonで記述したプログラムが遅いことと高頻度の取引データは銘柄によっては1日分であっても膨大な量になるため、現状では計算時間の制約を考慮して取引の少ない銘柄を対象に実証分析を行うしかなかった。2020年度はJuliaによる高速化と強力な計算機(大学が所有するGPUシステムを利用する予定)を活用することで、分析対象の銘柄を拡大するつもりである。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定されている国際大会で研究報告を行うための旅費等として使用するため。
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Research Products
(5 results)