2020 Fiscal Year Research-status Report
世代間資産移転税制と家計の消費・貯蓄行動に関する実証研究
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19K01703
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
濱秋 純哉 法政大学, 経済学部, 准教授 (90572769)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 世代間資産移転 / 相続税 / 生前贈与 / 遺産動機 / 所得税 / 租税回避 / 消費 / 自営業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,世代間資産移転税制が贈与行動に与える影響についての①実証研究の展望と②集計データに基づく分析,及び③租税回避行動についての実証研究を行った。 まず,①の結果として,先行研究の展望を通じて,遺産税(あるいは相続税)増税により税負担を回避あるいは軽減するための親から子への贈与が増加するという結果が得られていることが分かった。 つぎに,②については,「国税庁統計年報」の集計データに基づき,贈与税や相続税を対象とする過去の税制改正,とくに2015年1月に実施された相続税増税が贈与行動に与えた影響を分析した。具体的には,税制改正に対し,贈与や相続による取得財産額,取得者数,納付税額がどのように変化したか確認した。その結果,2001年の贈与税の基礎控除引き上げ,2003年の相続時精算課税制度の創設,2015年の相続税増税のいずれでも贈与が増加するという結果が得られた。2015年の相続税増税の直前期(2012年から2014年にかけて)には,贈与税の納付税額の増加が顕著であり,相続税の負担を回避あるいは軽減するために贈与が増加したことが示唆される。 最後に,③については,主に自営業世帯の所得税の回避行動について分析を行った。日本のみならず世界的に自営業世帯はサラリーマン世帯に比べて所得を過少申告している可能性が指摘されている。そこで,日本の自営業世帯の所得の過少申告割合を自営業世帯とサラリーマン世帯のエンゲル曲線を推定し比較することで明らかにすることに取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に行った生前贈与の動機に関する分析結果を論文としてまとめたり,世代間資産移転税制が贈与行動に与える影響について先行研究の精査や相続税・贈与税の税額・課税対象資産額などの集計データを用いた分析を外部の研究機関の報告書として公表したりできた。この他,自営業世帯の所得税の回避行動についての分析結果を,共著者が学会報告した。このように,データ分析,先行研究の精査,研究成果の公表を行うことができたため,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度の相続税増税が贈与行動に与えた影響の分析をより精緻化した上で英語論文としてまとめる。また,相続税増税が家計の贈与以外の行動に及ぼす影響や富裕層の(贈与以外の手段による)租税回避行動についてもデータ分析を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,学会や研究会がオンライン開催となり旅費を使用しなかったことが,次年度使用額が生じた最も大きな理由と考えられる。英語論文の英文校正費用やオンラインで開催される複数の国際学会への参加費としての支出を予定している。
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Research Products
(2 results)