2019 Fiscal Year Research-status Report
フロントライン従業員が個人レベルの市場志向と事業成果に及ぼすメカニズムの解明
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19K01963
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩下 仁 九州大学, 経済学研究院, 講師 (30608732)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 市場志向 / 個人レベルの市場志向 / マーケティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は初年度のため、まず、本研究の理論的基盤である個人レベルの市場志向(IMO:indivisual market orientation)とフロントライン従業員に関する先行研究の整理を目的として、レビューを実施している。そこで、システマティック・レビューを実施し、代表的な先行研究、ならびにその周辺領域に関する情報を収集している。 続いて、フロントライン従業員や組織における市場志向の普及に関する理解をより深めるため、フロントライン従業員に強みを有する企業の経営層数名に対し半構造化インタビューを実施している。この際には、九州大学ビジネススクールのネットワークを活用して、現場のセールス・パーソン、つまり、フロントライン従業員に強みを有する地元福岡市の有力企業の経営層数名に対して、現状把握のための取材を実施している。 さらに、代表者は、これまで取り組んできた市場志向研究の成果を踏まえつつ、同年度3月に『市場志向のマーケティング―組織の志向性がパフォーマンスに及ぼすメカニズムの解明―』という書籍を単著にて刊行している。当該書籍の第5章において、「組織における市場志向の普及プロセス」という章を設け、本年度に取り組んだレビュー研究の成果として、組織のなかでどのように市場志向が個人間で普及するのかについて論じている。 以上の3点を踏まえると、初年度については、レビューや取材を踏まえての現状把握、ならびに、研究成果の公表を全て完了することができていると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画書では、文献の整理ならびに、現状把握のための取材を計画していた。この計画を遂行できたと考えている。 本研究の理論的基盤である個人レベルの市場志向とフロントライン従業員に関する先行研究については、システマティック・レビューを実施し、代表的な先行研究とその周辺領域に関する文献を整理できている。 続いて、現状把握のための取材については、フロントライン従業員に強みを有する地元福岡市の企業の経営層数名に対し半構造化インタビューを実施した。 さらに、本年度に取り組んだレビュー研究の成果として、3月に刊行した単著『市場志向のマーケティング―組織の志向性がパフォーマンスに及ぼすメカニズムの解明―』の第5章において、「組織における市場志向の普及プロセス」という章を設け、組織のなかでどのように市場志向が個人間で普及するのかという視点から論じている。 このことから、初年度については、本課題に関する先行研究を踏まえた研究の整理と現状把握、ならびに、研究報告を全て完了することができていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度では、当初の計画どおり、個人レベルの市場志向に関する先行研究のレビューを実施すると共に、フロントライン従業員に強みを有する地元福岡市の企業の経営層数名に対し半構造化インタビューを実施した。当初の計画に加え、さらに、それらの成果を記載すべく、『市場志向のマーケティング―組織の志向性がパフォーマンスに及ぼすメカニズムの解明―』という題目で、単著の書籍を刊行している。次年度では、初年度の成果を踏まえて、個人レベルの市場志向の尺度開発を試みていく。個人レベルの市場志向尺度は、Lam et al. (2010) において開発されているが、米国の文脈にしか対応しておらず外部妥当性の問題が指摘される。そこで、2年目では、日本の企業を対象に調査を行ない、個人レベルの市場志向の質問項目の精査を行なっていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、初年度に実施した実務家への定性調査において、当初想定していた謝金ならびに旅費が生じなかったからである。代表者が地元福岡市において妥当性を有する企業を対象とすることで旅費ならびに謝金を節約している。したがって、被験者の選定に工夫を凝らすことで、当初予定していた謝金ならびに旅費に関する研究費の削減を実現している。 次年度の使用計画としては、個人レベルの市場志向の尺度開発を目指し、日本の企業を対象に調査を行うことにある。最終的には、定量調査を行うことになるが、第一段階では、先行研究に基づき、個人レベルの市場志向の測定項目を作成していくことになる。したがって、次年度使用が生じた研究費を活用し、定性調査を引き続き行い、質問項目の精査を行う予定である。
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