2019 Fiscal Year Research-status Report
Construction of Movement Action Theory Using Web GIS and Big Data
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19K02093
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
濱西 栄司 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (30609607)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会運動 / 運動行為 / 集合行動 / ビッグデータ / WebGIS / 集合行為 / 政治行動 / モバイル空間統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の実施計画は、(1)事例記述、(2)因果的説明、(3)民主社会の基盤についての考察、から成り立っている。 令和元(2019)年度は予定通り、まず(1)日本開催6回のG7/8サミットをめぐるプロテスト(SP)、1999年WTOや2001年G8他への海外の抗議事例、および反安保法制運動におけるアクション、メーデーに関するデータの収集と記述をWebGIS、ビッグデータを用いておこない、アーカイブ化を進めた(濱西 2019, 2020b)。中でも反安保法制のアクションについて、従来的研究と比較しつつ、ビッグデータを用いて参加者数、参加者の属性等を現実的な数字で推定できたことは重要で国内外初の実績である(濱西 2019, 2020b,未発表)。ビッグデータの運動研究への幅広い応用に向けた第一歩となる。 またもともと想定していた<事例を先に見つけてビッグデータで実際の変化をとらえる>という手法に加えて、新たに<実際に変化しているメッシュをさきに見出して、そこで何があったのかをとらえていく>手法を試行できたことも重要な成果だといえる(未発表)。 並行して(2)研究協力者とともにアクションを統一的に記述する方法論の整理をすすめ、rally、march、piqueなどの区別、説明時の客観的要因/主観的要因の区別、物理的要因の位置づけについても検討をおこなった(濱西 2019, 2020b[6章])。また都市社会と運動行為の関連についての検討も進め(濱西 2021)、新たな運動行為論のベースとなりうる歴史的行為論の検討(濱西 2020a)、および運動研究の方法論とプロテストの行為論的分析(濱西 2020b[序章・第3章])もおこなっている。(3)これらの実証研究をふまえ、民主社会における労働運動・社会運動・政治行動のありようについての考察も進めた(濱西 2019, 2020b[6章], 2020c)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)事例記述については、予定通りデータ収集・記述をおこなうことができている。とくに反安保運動の変化をビッグデータで捉えられたこと、およびビッグデータの変化から事例を見つけ出す逆算的手法を試行できたことは予想以上で、データや手続きの信頼性、限界について重要な知見を得ることができた。またこの1年間でビッグデータの運動論・社会学的活用法や倫理的課題について提供会社と協働で検討できる関係性が築けたことは、予想以上の成果だといえる。類似の使用事例がまったく存在せず、また購入前には本当にその集まりがデータで捉えられているかが一切わからないサービスの特性上、事前のやりとり(事例のレクチャーや試行のお願いなども含め)が特に重要になるからである。 (2)因果的説明、(3)民主社会の基盤の考察についても、マクファイル教授、デッラ・ポルタ教授、および研究協力者の協力の下、運動行為の統一的な記述についての方法論的検討、運動行為概念の基礎付け、下位概念の整理を進めることができ、また労働運動・社会運動の歴史的展開と国家・民主社会の関係についてパブリッシュする機会が得られたことは、予想以上の成果であった。 なお、ビッグデータサービスの日進月歩の発展はやや予想外で(メッシュの細密化、利用可能時期・範囲の拡大)、予算をより有効に使用するために、さかのぼれる期間のデータ購入は翌年度に回すようにした(同額費用でより詳細なデータが得られるため)。また感染症流行により、本研究で使用しているビッグデータが注目を集め、同時に研究が社会的な関心とリンクするようになってしまったたため(集まりの把握が非常事態下の集まりの把握につながる)、年度末はデータ購入を控え、情勢を見守るようにした。このようにビッグデータ収集の面で予定外のことがあったとはいえ、事例記述や説明、考察の作業は予定通り、部分的には予想以上に、進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ビッグデータの日進月歩の発展をふまえ、本研究のベースとなる(1)事例記述に資するビッグデータの収集に力を入れる。この間、感染症対策のために、本研究で使用しているビッグデータの政府等による利用が格段に進み、それに伴い、データ自体の利用可能範囲が大幅に拡大している。改めて提供会社と検討しつつ、2019年度予算分と合算してデータの購入を大きく進める。また、事例からデータを収集する手法を用いて有名な過去の事例を記述するだけでなく、まだ知られていない事例についてデータから事例を見つけ出す逆算的手法の試行にも――成功したときのインパクトに期待して――引き続き取り組む。 研究遂行上の課題は、とくにコロナ感染症が広がる中で、路上での集合的な抗議活動が大幅に減少すると思われることである(抗議集会やメーデーの中止など)。引き続き、収集済みのデータによる事例記述を進めつつ、(路上での抗議行動の希少性が高まるなかで)事態収束時に大きな動きが現れるか状況を注視していく。また物理的距離を保った形での抗議行動は、感染症下においてもすでに徐々になさているので、それらのデータも集めていく。 また先駆的な研究ゆえに、ビッグデータ活用の倫理や社会的責任の問題について、常に同時に考え続け発信していくことは、引き続き本研究の推進方策として、非常に重要である。
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Causes of Carryover |
ビッグデータサービスの日進月歩の発展(メッシュの細密化、利用可能時期・範囲の拡大)をふまえ、予算をより有効に使用するために、あえてさかのぼれる期間のデータ購入は翌年度に回すようにした。また感染症流行により、本研究で使用しているビッグデータが注目を集め、同時に社会的な問題と直接リンクするようになってしまったため(集まりを把握することが非常事態下の集まりを把握することにつながる)、年度末はビッグデータ購入を控え、情勢を見守るようにした。いずれの変更も、予算のよりよい執行、および研究推進のためのもので、次年度に使用額が生じるようにした。その分は2020年度に、予定通り2019年度以前の事例のデータを、さかのぼって購入する費用に充てる。同じ額の費用で、2019年度に購入するよりも、詳細かつ広範囲のデータが購入できる見込みである。
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Research Products
(5 results)