2022 Fiscal Year Annual Research Report
学校現場におけるネットワーク型OJTに関する実証的研究
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19K02424
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
笹田 茂樹 富山大学, 学術研究部教育学系, 教授 (00553132)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | OJT / 同僚性 / 協働 / 双方向の学び |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,従来の上意下達的な従来型OJTが様々な限界を抱えていることから,同僚性を基盤とした新たなOJTの方法を模索するものである。 2022年度には日本教育政策学会で「子ども参加の学校づくりの動向」という発表を行い,学校づくりにおいて管理職のサポートを得ながら先輩教員から後輩教員へノウハウが引き継がれていく事例を紹介した。 本研究では,新型コロナウイルスの断続的な感染拡大のため,富山市のA小学校とB小学校の2校に絞って,聞き取り調査と参与観察を実施した。 A小学校では,同校で実施されている「部会研修」において,ベテランから若手,若手からベテランの「双方向の学び」が確認できた。特に2021年度からは,若手の発言が増え,若手からベテランへの積極的な働きかけがより顕著に見られ,また,この「双方向の学び」が同校で進められている働き方改革にも寄与していることも明らかになった。 B小学校では,約15年前から積極的に子どもの声を学校運営に活かす取組が進められてきたが,歴代の管理職がこうした取組に賛同してバックアップを行ってきたことと,子どもたちが成長する姿を教員たちが目の当たりにして喜びを感じることで,教員間での引継ぎがスムーズに行われ,常に取組をブラッシュアップしながら現在まで継続していることが明らかになった。 文献調査では,ピーター・M・センゲや,ジャルヴァース・R・ブッシュ、中原淳らの知見から,組織開発における成員間のコミュニケーションの重要性について理解を進めるとともに,J・ハーバーマスの公共性理論やA・ホネットの承認論などを再吟味することによって,「双方向の学び」をもたらすネットワーク型OJTの理論をさらに補強する可能性を見いだせた。特にA・ホネットの理論からは,教員間の相互主観的な承認関係が発展・継続していくことで,より効果的なOJTを展開できるのではないかと考察した。
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