2021 Fiscal Year Research-status Report
読譜視線計測に基づいた高齢者ピアノ学習におけるつまずき改善
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19K02464
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
古庵 晶子 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (90639337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹川 佳成 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (60467678)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ピアノ演奏ミス / 楽譜表記と視線 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者のピアノ演奏特性の一つに、「演奏中に演奏が滞る」、つまり演奏が途中で止まってしまい、メロディーの流れが遮断されてしまう、ということが散見される。これまで高齢者がよく使用していると考えられる楽譜の分析や、指導者たちや高齢ピアノ学習者たちへの質問紙調査から、高齢者にとっては、スタンダードな運指が難しかったり、簡易編曲でも演奏しにくかったりで、高齢者に合った運指や編曲のパターンがあるのではないかと考えたのがこの研究課題のきっかけである。 2021年度は、2020年晩秋に収集した6名の高齢者ピアノ演奏時の手指の状況を収録した動画とその際のアイトラッカーの撮影による視線動画より、演奏ミスについて一つずつ検討した。そして演奏した8小節の曲のうち、まず前半4小節における、特に演奏ミスの特徴が目立つと思われる箇所について検証した。その結果、主に次の3点にまとめることができた。(1)楽譜における視線移動による原因:①楽譜の先読みが遅れる。②音符や鍵盤をひとつずつ確認しながら弾き、音価が延びる。③同じ音符を何度も確認するため時間がかかる。④先読みが早すぎて余計な情報となり混乱する。⑤一度弾いた音符を再度見てしまい時間がかかる。(2)楽譜表記による影響:①指番号が詳細過ぎると混乱する。②タイで結ばれた音の後続音の状況次第でミスを誘発する。(3)慎重さゆえの危うさ:①順次進行や3度のナチュラルポジションの鍵盤をあえて見てしまう。 これらの結果は、まだ曲の前半ということも含め、高齢者の演奏特性であるとは断定できないとしたうえで、11月の日本音楽知覚認知学会で口頭発表した。後半4小節については近々発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年秋に発表した検証結果は、高齢者特有の演奏ミスの様相であると断定はできないため、若年成人7名にも同じ調査を2021年12月~2022年1月にかけて行った。現在はその動画の分析のための資料作成が完了したところである。全体的に遅れている理由は、代表者の学内での仕事が増えたこと、分析作業を一緒に行なうアルバイト(理系他大学学生)の確保に手間取ったことなどがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢者の後半4小節の演奏ミスについての口頭発表(6月)を終え次第、研究報告にまとめたうえで投稿(8月)の予定である。そして、統制群である比較対象の若年成人の分析結果が出せ次第、年齢による演奏ミスの原因の違いや、高齢者特有の演奏ミスとその原因について検証し、口頭発表(11月)を行う予定である。 その後は視線計測の数値情報と照合し、高齢者にとって弾きやすいと考えられる運指による楽譜を1曲作成し、再度視線計測調査を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究の遅れから、本来2021年度中に行なう予定であった調査ができなかった。その分の人件費や謝金が2022年度に発生することとなる。また、学会発表の際に指摘された点を改善するために、分析資料の確認を他者に依頼することを計画しているため、その謝金も発生する。
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Research Products
(2 results)