2022 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児期の学びの質を維持・向上させるカリキュラムマネジメントの開発に関する研究
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19K02612
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
大野 歩 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60610912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七木田 敦 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (60252821)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生涯学習型保育 / ドキュメンテーション / 子どもの視点 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スウェーデンの「ペダゴジカル・ドキュメンテーション」をもとに、日本における「乳幼児期の学び」の質を維持・向上させる新たなカリキュラムマネジメントの手法を開発することにある。当該年度は、①スウェーデンの生涯学習型保育にかかわる文献調査と、②スウェーデンにおける生涯学習型保育モデルに基づく国内での実践研究の2本を柱として、研究を行った。 ①文献調査からは、スウェーデンの生涯学習型保育を根底で支える、リゾマティックな学びへの志向、子どもの視点から学ぶ保育の編成、ドキュメンテーションによる質的な保育実践評価の3つの視点が見出された。そして、保育のカリキュラムマネジメントにおいて、上記3点を子ども理解、記録、ドキュメントの作成、ふりかえり、新たな課題の抽出、実践の改善というサイクルに落とし込むことにより、独自な保育実践とその評価、実践改善を包括したカリキュラムマネジメントを形成していることが明らかとなった。これらは、日本の保育・教育のカリキュラムマネジメントで推奨されるPDCAサイクルとは異なる形態である一方で、日本の保育環境に適した方法へ修正していく必要もあると考えられた。 ②国内における実践研究については、スウェーデンにおける保育理論を基盤に子どもの視点から学ぶ保育編成を目指した実践研究を行った。具体的には写真投影法を用いて子どもの視点を理解し、保育を改善していく方法である。研究の結果、保育者が写真を通じて子どもの視点を理解しようとし、さらには子どもの声を聞こうとする姿勢が育まれることが示された。その上で、保育者が能動的に保育を改善しようし、実行する状況が生起される様子が示された。また、それらが現状の保育者の就労時間内で実施できるような、保育者にも負担の少ない方法により、保育の改善が見込まれることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍下の影響で現地調査ができずに、文献調査から見出された課題を検証し国内で汎用する方法を見出すための実践研究へ切り替えた。しかしながら、コロナの感染拡大状況に左右されることが多く、研究が予定通りには運ばなかった。具体的には、研究者の園への立ち入りが禁止される期間が長期にわたり続いた。また、保育者との研究会が、保育者の園の事情に伴い、度々延期や中止となるなど、データの収集や保育者へのフォーカスグループインタビューなどが、予定の3割程度しか実施できない状況に陥った。 対応策として、webフォームへの回答などで、代替措置を試みたものの、やはり収集されたデータ数が少なく、分析した際の客観性を十分に担保できないと判断した。 これら状況を踏まえ、再度調査を行い、データの収集数を増やして分析を行えるよう、本科研費の研究期間を一年間延長する申請をして、さらに方向性を切り替えた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、コロナの感染拡大により進められなかった国内における実践研究を展開する。具体的には、子どもの視点から学ぶ保育にかかわる写真投影法の実施と、そのデータを持ち寄った研究会の開催を通じた保育者へのインタビューを行う。データの収集においては、対象となる園の保育者に子どもの視点から写真を撮影してもらい、そのデータを集めておくとともに、一部をドキュメンテーションにして研究会へ持ち寄る。研究会では、持ち寄った子どもの視点の写真から子ども理解を討議し、新たな子ども理解を育むとともに、子どもの視点から気づいた保育の改善案などを話し合う。それらを園へ持ち帰って実践に反映させ、その中で新たに写真を撮影していくというサイクルを3回ほど循環させる。これら実践研究により、データ収集と分析を行って、結果をまとめる。研究成果は論文等で発表する。同時に、保育者間での実践研究報告会を実施し、各園での保育者の学びを地域の保育へ還元させていくような流れを形成する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画にあったスウェーデンにおける現地調査がコロナ禍下の影響により中止となった。そのため、国内の幼稚園における実践研究へ研究計画を修正したものの、やはりコロナの感染拡大による影響で園への立ち入り禁止や研究会の中止が続き、実践研究も計画通りに運ばなかった。折しも、コロナの感染状況が収束に向かいつつあり、海外渡航が解禁される兆しが見えてきたため、再度計画を見直し、研究期間の延長を図った上で現地調査を実施したいと考えている。そのための渡航費として、次年度に余剰を繰り越した。次年度の予算について、主な使用計画は次のとおりである。 スウェーデン調査渡航費(9月):45万×2名 研究成果発表のための学会参加・出張費(5月・12月):10万×2名
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Research Products
(5 results)