2019 Fiscal Year Research-status Report
作品・分野別漢文教育実践史に基づく漢文教育改善の研究
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19K02822
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
渡辺 春美 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (10320516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨安 慎吾 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40534300)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 漢文教育 / 実践史 / 漢詩 / 文献目録 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、本研究の「基礎段階」(1年目前期~後期)にあたる。その主たる研究項目は3点であった。以下、3点を主として研究実績の概要を報告する。 【1】作品・分野別漢文教育実践資料目録の作成および資料収集については、冨安慎吾によって①土屋泰男「漢文教育文献目録昭和23年~46年5月」(1972年)、②吉原英夫「漢文教育文献目録(戦後編) 」(1998年)、③塚本勝郎「漢文教育文献目録(1971.6~2005.5)」(2005年)、④冨安慎吾「漢文教育文献目録」(2018年)を基にし、新たに調査した文献を加えて目録を作成しつつある。 【2】上記目録に基づき、一部については、作品別文献目録(漢詩他)を作成した。資料の収集については、戦後~1970年の『斯文』誌、近年の『漢文教室』誌、『新しい漢字漢文教育』誌の実践論考の収集を行った。また、個体史を視野に江上順一氏の実践論考・書籍を入手した。 【3】資料を基にした実践史研究については、①「戦後漢文教育実践史の展開―『新しい漢字漢文教育』誌を中心に―」において、漢文教育の現状と漢詩の授業実践について考察した。また、「同―江川順一の漢文教育実践の場合―」において漢詩の実践を中心に考察した。この内、前者については、実践を、A読解型学習指導、B主体的学習に導く学習指導、C表現活動を取り入れた主体的学習指導に分類して考察した。その結果、次の特色がうかがえた。漢詩の指導においては、中・高等学校ともに、訳詩・イメージ画、鑑賞文、短歌などの創造的な表現活動を取り入れている。漢詩指導において表現に結びつける実践は昭和30年代から見られ、その影響が考えられる。また、理解と表現の関連指導を打ち出した学習指導要領の影響も強いと考えられる。後者については、 読みを表現に関連させ、授業を動的に展開しようとしたところに、江川順一の授業作りの基本姿勢がうかがえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1 作品別・分野別文献目録の作成―①土屋泰男「漢文教育文献目録昭和23年~46年5月」(1972年)、②吉原英夫「漢文教育文献目録(戦後編) 」(1998年)、③塚本勝郎「漢文教育文献目録(1971.6~2005.5)」(2005年)、④冨安慎吾「漢文教育文献目録」(2018年)の先行文献目録はあるものの、実践論考か理論に関する論考か目録のみでは確認が難しく、時間を要した。 2 資料の収集―目録から実践論考を選出した後、資料そのものを収集するために時間を要した。また、新しい資料の収集も、出張を必要とするものもあり、計画したとおりには捗らなかった。 3 文献調査・収集―本年2月後半からは、資料の収集・調査のための出張を複数計画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大のためにキャンセルせざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1 2020年度は、「考察段階」(1年目後期~2年目前期 *期を重ね、可能なところから着手、以下同じ)、 および「構想段階」(2年目前期~2年目後期)にあたる。研究分担者、冨安慎吾(島根大学)は、「考察段階」において、引き続き、先行の漢文教育実践論考文献目録の作成とともに、新たな実践論考の収集と文献目録の充足、作品・分野別の漢文教育実践目録作成を急ぐ。 2 研究代表者、渡辺春美は、収集した実践資料を基に、「関係概念」に基づく漢文教育の観点から、作品・分野別に成果と課題を明らかにする。それらを史的に考察し、位置づけ、成果と課題を把握することに取り組む。資料収集の過程で、実践には作品・分野別において偏りがあることが分かった。漢詩・思想(論語)は多いが、散文教材になると実践事例が少ないことが分かった。そこで、漢詩、思想(論語)、史伝(史記)、故事成語、日本漢文に絞って考察を進めることにする。 3 実践史の考察において、授業活性化の要素を、ア.目標、イ.漢文教育内容(教材・言語能力)、ウ.方法、エ.評価に分けて抽出し、授業作りの基礎論としてまとめる。 4 次いで2020年度後期に、「構想段階」に入る。 実践史研究の成果と課題を踏まえ、漢文学・教育学等の知見を生かし、「関係概念」に 基づくカリキュラムを作成し、授業を構想する。また、「3」を踏まえ、研究協力者と協議し、授業計画(学習指導案)を作成する。 本研究の計画では、2020年度後期に「実践段階」に入り、一部授業を実施することを考えていたが、本研究の遅れ、中学校・高等学校における新型コロナウイルス感染による授業時数の問題などを考えると、研究授業を2020年度内に行うことは難しいことも考えざるを得ない。研究授業は、2021年度以降に設定することにする。
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Causes of Carryover |
1 次年度使用が生じた状況―(1)①所属大学内において新たに委員会活動が加わり、ほぼ1年間を通して新たな仕事に時間を費やさざるを得なかった。また、②教員の異動によって欠員が生じたことによって担当科目が増え、年間を通して取り組まざるを得なかった。これらの理由によって、科研に関して計画したエフォートを達成することができなかった。(2)本年、2・3月に予定していた国語教育史学会主催の東京における研究会が、新型コロナウイルスの感染拡大によって中止となった。また、資料収集のための複数の出張計画もキャンセルせざるを得なくなった。以上の状況によって、次年度使用が生じたと考える。 2 使用計画―新年度も、新型コロナウイルス感染による緊急事態宣言が発せられるに至った。オンライン授業の準備等に追われる現状がある。すでに出張を予定していた学会の中止も決まった。このような状況があり、先行き不透明であるが、集中して研究を進め、①文献の調査・収集のための費用、②年度後半に開催される学会発表のための出張費、③文献整理、目録作成のための謝金、④研究協力者との研究協議費と謝金に助成金を使用したい。
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Research Products
(3 results)