2019 Fiscal Year Research-status Report
Japan-Korea comparative study of the law, system, administration and finance on the progressive introduction of free education at higher education
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19K02864
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渡部 昭男 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (20158611)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 学生が体感可能な負担軽減(韓国) / 高等教育の無償化(日本) / 大学入学金廃止(韓国) / 大学等修学支援法(日本) / 国際人権A規約(社会権規約) / 漸進的無償化 / 後退禁止原則 / 具体的な措置義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ:日韓における経済的負担軽減及び修学支援に係る制度・行財政を把握し、その意思決定過程を分析する作業を行った。国家政策として、①キム・フンホ准教授の報告をもとに韓国の文在寅政権下の「学生が体感可能な授業料負担軽減の推進」策(給付型国家奨学金の拡大拡充、大学入学金の廃止、学生寮の増設、ローン金利の利下げなど)に係る動向を把握した。②日本については、2017年以降の「高等教育の無償化」(低所得者限定の学費減免と給付型奨学金)への政策転換の経緯をまとめた。 Ⅱ:以上で把握した日韓の国家政策の特徴を比較検討し、そこに見られる法規範を源泉とした「法規範⇒意思決定⇒制度・行財政」というダイナミズムを解明した。2017年前後から本格化した日本における高等教育無償化の政策立案は、首相・首相官邸・内閣府が政治主導する形で基本の方針と枠組みがまず設定され、その下で必要に応じて文部科学省の有識者会議・検討チーム等に具体の制度設計を委ねるという特徴を有していた(官邸・行政府ルート)。一方、「消費増税分使途変更」と抱き合わせの「真に支援が必要な所得の低い家庭の子供」限定(選別主義)であったために、国会審議を経ての立法化という段階に至ると、日本国憲法の「教育を受ける権利」、教育基本法の「教育の機会均等」、国際人権A規約の「漸進的無償化」などの規範(普遍主義)に照らして、検討・吟味がなされる形となっていた(立法府ルート)。 Ⅲ:社会権規約について、武村二三夫弁護士・申ヘボン教授の報告をもとに、国際人権の実施制度、社会権規約上の国家の義務、13条「教育への権利」とその実現に係る要点を把握した。日本政府の場合、後退禁止原則、具体的な措置義務に係る課題が浮き彫りとなった。 Ⅳ:他に、ベーシック・インカム論(若者年金)及び地方施策(首長選挙時の候補者の公約、47都道府県の教育費支援情報の広報)も調査・検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、日韓の国家政策及び国際人権規約の法理念を把握するために、3つの特別企画を開催した(当日資料等は神戸大学学術成果リポジトリKernel<http://www.lib.kobe-u.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000003kernel>にアップ)。 ①特別企画(1)「韓国における漸進的無償化に係る法枠組みと主要教育政策」/2019年6月8日@神戸/キム・フンホ(国立公州大学校准教授)「文在寅政府2年、教育政策の変化:教育の公共性強化及び高等教育の質の向上政策を中心に」。 ②特別企画(2)「ベーシック・インカム/国際人権規約」2019年9月14日@京都/小沢修司(京都府立大学名誉教授)「ベーシック・インカムからみた若者支援(年金)」/武村二三夫(武村法律事務所)「国際人権規約にかかる日弁連の活動と社会権規約13条「教育への権利」」。 ③特別企画(3)「人権侵害を問う」2020年1月25日@東京/高等教育無償化プロジェクトFREE「実態調査アンケートから見えてきた高学費に苦しむ学生の実態」/西川治(神奈川総合法律事務所)「高等教育費の費用負担をめぐる法的検討」/申ヘボン(青山学院大学教授)「国際人権規約(社会権規約)における教育権とその実現:社会権の権利性の観点から」。 次に、地方施策を把握するために、首長選挙時の候補者の公約調査((1)北海道・神奈川・福井・三重・大阪・奈良・鳥取・島根・徳島・福岡・大分の11道府県、(2)札幌・相模原・静岡・浜松・大阪・広島の6政令市、(3)水戸・津・高松・長崎・大分の5県都、(4)衆議院補選大阪12区・沖縄3区、(5)堺・京都の2政令市、(6)青森・群馬・埼玉・岩手・高知・熊本の6県)、教育費支援情報に関する広報調査(47都道府県)を行い、それらの結果を一覧にしてKernelにアップし公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染症対策のために韓国訪問調査や韓国研究者招聘に困難が予測される。そこで、2020年度はメール交換やウェブ対話という形で可能な作業を進める。 高等教育における経済的負担軽減及び修学支援に係る法・制度・行財政に係る論文執筆(韓国語・英語)を韓国等の海外研究者に依頼し、その論稿を日本語に翻訳する。それらを共有財産とした上で、メールやウェブを用いて意見交換を行う。なお、コロナ問題が終息した段階で、韓国訪問調査なども行う。 最終の2021年度には、日韓シンポジウムを企画・開催し、さらに研究テーマを深める。
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Causes of Carryover |
3/22-25の予定で韓国訪問調査を予定していたが、コロナ感染症対策のために渡航中止となり、当該分の経費が先送りとなったため。
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Remarks |
補足【表1~6のURL】表1、http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81011882.pdf/表2、同/81011883.pdf/表3、同/81011884.pdf/表4、同/81011885.pdf/表5、同/81011978.pdf/表6、同/81011979.pdf。
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Research Products
(10 results)