2020 Fiscal Year Research-status Report
Reforming Governance in the Italian Higher Education System - a Comparative Study of the Pitfalls
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19K02869
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Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
関沢 和泉 東日本国際大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (90634262)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高等教育 / ニュー・パブリック・マネジメント / イタリア / ガバナンス / 大学改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本と類似した、英米圏での改革をモデルとした大学改革を実施してきたイタリアの状況の分析を実施し、それにより日本の改革を考えるための視座を手に入れることを目指している。 本年度は、特に大きな転換点となったと考えられている2010年に公布された240法による「ジェルミーニ改革 riforma Gelmini」がどのような目的で実施され、どのような反応・行動を引き起こしたかを追った。 この2010年の改革に関しては、非常に多くの文献が改革前後より出版されている。それらは、おおよそ3つの段階に分けることができるようだ。(a) 2010年前後の、そもそも何が変更されようとしているのかを従来の大学制度との関連で、その批判も含め記述するもの、(b)2014~5年ぐらいまでの、改革を実際にどのように実装するかという問題を多く論じるもの、(c)それ以降、ジェルミーニの改革を、それがモデルとした英米圏の改革との比較を通じた成否の判断も含め、多角的に位置づけるものである。本年度は主に (a) と (b) に属するものを検討した。 これらの文献によると、(a)の時期より、(1)ジェルミーニ改革の基本は「ガバナンス」(これ自体が外来の概念として英語のまま用いられることも多い)の確立を目的とするものだが、それは従来の大学の構成員を周縁化し、同時に外部からの参加を強め、学長の権限と役割を強めることで属人化とでもいうべき変更を行うものであり、直前まで強められてきた大学の「自律性」(自治)との関係が課題となる。(2)ガバナンス確立を目的とした改革は、多くが国立大学で公的資金が投入される大学の説明責任(こちらもアカウンタビリティがそのまま用いられることも多い)との関係で論じられる一方、多様なステークホルダーとの関係など、改革の意図するところと改革の実際とのずれも(b)の時期にすでに多く指摘されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2010年の改革に焦点をあてた文献研究としての側面は、ほぼ予定通りに進展しており、2010年の改革が、それまでのイタリアにおける改革の方向性とずれつつ、その後の議論の基盤を作っていることが見えてきている。また2010年代の中盤以降は、2010年の改革をより長い歴史的基盤の中で位置づけ、その成否を検討し、あらたな方向を探る動きも出てきていることが分かった。 他方、こうした文献調査を基盤とした現地調査を予定していたものの、新型コロナウイルスの感染状況はイタリアにおいて、特に年度の前半にひどいものであり、その後も一進一退であったこと、また日本の状況も国外調査を許すものではなかったことから、現地調査を延期する必要が生じてしまった。この点については、新型コロナウイルスへの対応も含め、現地情報を追っており、また、2010年の改革について、より長い歴史的視座から位置づける調査により、ある程度の代替を行っているが、対応が迫られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の調査により、2010年の改革について、特に2010年代の後半以降、広い視点から改革の成否について位置づける文献が現地において増えていることが分かった。すなわち、(1)改革の意図をあらためて同定、(2)モデルとした英米圏との改革との関係におけるその成否の検討、(3)意図自体との関係での成功の成否の検討、といったかたちで、改革をそれ以前からの流れの中で、ある程度距離を置いて位置づけし、改革の再方向付けを視野に入れる一連の研究である。 これらの現地での研究は、改革の状況に対する応答がどのように可能であるか、また英米圏モデルの実装における課題や、そうしたモデル設定自体の妥当性について検討する重要な示唆を与えており、本研究が目的とする日本の状況の再検討への寄与に繋がるものであるため、この時期における、2010年を振り返っての改革の位置づけについて、より広く文献を収集し分析する。 他方で、本年度に予定していた現地調査について、イタリア・日本におけるワクチン接種の進展状況も大きく関係してくるため、オンラインでの調査・インタビューも含め、代替手段を検討する。
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Causes of Carryover |
当初、当該年度においてイタリアでの現地調査を予定していたが、新型コロナウイル感染拡大状況が収束せず、現地調査を行うことができなかったため。 次年度においては、ワクチン接種がイタリアと日本両者において順調に進展すれば現地調査が年度内に可能となると考えているが、夏までの状況を見て、オンラインで可能な調査へと切り替え実施することも含めて検討する。
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Research Products
(5 results)