2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K02885
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿曽沼 明裕 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (80261759)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アメリカ / 研究大学 / 存立基盤 / 財務・財政 / 組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の研究大学の在り方を考える基礎を得るために、研究大学が生まれたアメリカで、研究大学がどのように維持され支えられているのか、その組織的・経済的基盤を明らかにすることにあり、とくに研究大学と非研究大学との相違や、研究大学の多様性を捉えるためにその組織的・経済的基盤の類型化を行い、さらにその背後にあるメカニズムを探るものである。 本年度はアメリカの教育省の個別大学データベースIPEDS(The Integrated Postsecondary Education Data System)を利用して、米国の研究大学のマクロな位置づけと経済的基盤について、データの整理と分析を行った。まず、高度に機能分化したアメリカの高等教育システムにおける研究大学の位置を把握するために、機関数、学生数、機関収入、基本財産がどのように分布しているのかを、カーネギーの高等教育機関類型と設置形態の違いに着目して検討した。その結果、高等教育システムにおける機関数の分布と学生の分布は大きく異なり、特に博士大学、研究大学の機関数が僅かであるにかかわらず学生数が集中していることが分かった。さらに学生数の偏在以上に、機関収入と基本財産が博士大学や研究大学に偏在していることが明らかになった。 次に、高等教育機関の財源構成が、機関類型や設置形態でいかに違いがあるのかを、コア財源依存型、財源多様型などのモデルを使いながらパターン化して比較した。そのなかで研究大学を含む博士大学は、私立機関は「財源多様型(研究指向・市場指向・資産指向・事業指向)」,公立機関は「財源多様型(研究指向・市場指向・事業指向)」に位置づけられることが分かった。 このほか、研究大学の社会的基盤を考える際に無視できない、学問の自由と大学の自治の問題について、歴史的な経緯を整理しながら考察し、学問の自由の相対性の一側面を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度は、前年度に体調不良から研究の進展が遅れていたことに加えて、新型コロナウィルスの世界的な広がりのために、予定していたアメリカへの訪問調査(大学の部局、大学執行部、大学システム、政府に対する)を実施することができなかった。このため米国の個別大学データベースであるIPEDSを利用して、博士大学や研究大学の特徴を検討することができ、その点は大いに研究は進展したが、全体として当初の計画からは遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画の実施の遅れを取り戻すために、アメリカの大学への訪問調査を行う予定である。ただし、新型コロナウィルスのために海外訪問調査が困難になる可能性も踏まえて、引き続き、文献レビュー、IPEDSを利用した研究大学と非研究大学の相違についてのマクロな分析を行いつつ、各個別大学のウェブサイトから組織や財務に関する情報の収集と分析を行い、来るべき訪問調査のための準備を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度には前述した理由のため研究の実施が遅れ、当該年度に予定していた主要な支出ができなかった。次年度には、当該年度に支出できなかった、資料やデータの分析のためのパーソナルコンピュータやソフトウェアの購入、米国への調査のための海外出張費用などに支出を予定している。
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