2020 Fiscal Year Research-status Report
市販試薬を用いたチーム基盤学習形式による新規放射線教育
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19K03128
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
藤野 秀樹 兵庫医療大学, 薬学部, 准教授 (90510975)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射線教育 / 放射線計測 / 自然放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
下記のサブテーマにて市販試薬を用いた核種推定に関する放射線教育プログラムを開発した。1)放射線源及び計測器の入手や確保が容易であること。2)放射線計測の再現性が高く、放射線の種類や特性が理解できる内容で、30分程度で実施可能であること。3)本放射線教育を学外にて実施すること。4)第三者評価を受ける為に学外にて本取り組みを発表すること。 最初のサブテーマについては、放射線源はβ線放出核種の他に、β及びγ線放出核種を含有する試薬を用いた。次に放射線計測器として無償で放射線教育用に貸し出されている教育用放射線計測器の同機種を入手した。教育用計測器にて汎用型のサーベイメーターとの比較試験を行い、放射線計測のバリデーション試験に実施した。これにより、教育用計測器においても一次反応速度に従う遮蔽特性を示し、放射線の減衰特性から核種推定が可能なプログラムとなった。第三に学外での放射線教育への展開については、本放射線教育プログラムを公益財団法人日本科学技術振興財団が主催する2020年度放射線教材コンテストへエントリーした。本コンテストは主に中高生を対象に放射線や放射能を正しく理解する為に大学生らが作製した教材やコンテンツを紹介する場として設けられている。そこで、本プログラムの紹介動画を作製した。動画コンテンツは大学生らが高校生に理解可能な内容とした。応募101作品中で本プログラムは最優秀賞を受賞し、授賞式はオンラインにて行われ、全国に配信された。この他、本放射線教育への取り組みについて令和2年度放射線安全取扱部会年次大会(2020年11月)及び第22回環境放射能研究会(2021年3月)にてオンライン形式にて発表した。 これらの研究により、管理区域外にて実施可能な放射線教育プログラムが確立し、放射線教育も一部実施できたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えている。本結論に至った理由について下記に記す。 1)市販試薬を用いた放射線教育プログラムを確立した。本研究では放射線源として塩化カリウム(40K)、塩化ルビジウム(87Rb)、酸化ルテチウム(176Lu)を用いており、いずれも市販試薬として入手可能である。また内径2cmの試料皿に各種試薬を充填して薄膜で覆うことで容易に放射線源の作製が可能となった。また放射線計測器については関西原子力懇談会や日本科学技術振興財団及び日本アイソトープ協会等で無償にて貸し出されている教育用計測器にて放射線源の計測並びに再現性の確認が終了している。更にβ線やγ線の減衰特性から核種推定を行う体験型放射線教育も確立できた。 2)放射線教育従事者の育成を開始した。薬学部生は薬学教育モデル・コアカリキュラムにて放射化学や医療コミュニケーションを必修科目として履修する為、4年次までに放射線の知識と傾聴姿勢を有している。よって、薬学生を放射線教育のファシリテーターとして養成することも可能である。また試薬に含まれる天然核種は長い物理学的半減期を有しており、前述の教育用放射線計測器で計測が可能な為に短期間にて機器取扱いの教育訓練を遂行できる利点もある。 3)第三者評価として放射線教材コンテストへ応募した。研究概要で記した2020年度放射線教材コンテストで最優秀賞を受賞している。応募に際し、高校生が理解しやすい内容を目的とした動画を作製した。また本動画をオンライン受講することでオンデマンド形式にて遠隔で放射線教育が実施できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策について各項目にまとめる。 1)新規放射線源としてのラドン222の利用を行う。ラドン222はラジウム226の放射性壊変にて生成する天然核種である。ラドン222は空気中に存在し、自然放射線による内部被ばくの原因核種として知られている。しかしながら、ラドン222はα壊変核種であり、放射線計測が困難である。そこで、ラドンの壊変系列に着目し、β線放出核種であるビスマス214及び鉛214を空気清浄機により捕集して新たな放射線源とする。これらのβ線エネルギーは比較的高い他、異なるエネルギーのγ線を放出することから、放射線のスペクトル解析による核種推定も可能となる。更に前述のβ線放出核種の物理学的半減期は約25分の為、1次反応速度式に従う減衰の評価も可能である。 2)放射線教育従事者の育成を遂行する。進捗状況で記したように薬学生は放射線の専門知識と傾聴姿勢を有しており、放射線教育の教育を担う資質がある。これまでに本学RI実験センターを利用している放射線業務従事者への教育訓練にて実習の説明や放射線計測の補助を行っており、今後も継続して行きたい。 3)本年度も放射線教材コンテストへの応募を予定している。本コンテストでは教材紹介の動画提出が応募条件の為、内容の説明以外に実習の意義や注意点等を比較的短時間に集約して作製する必要がある。これらは学生らの問題解決能力の涵養に重要と思われる。 本研究による放射線教育は、理科と数学の複合領域を学ぶことで多角的・多面的な視野で問題を捉える能力を身に付けられる他、放射線障害防止法等の規制を受けない自由かつ斬新な教育が可能となり、放射線に関する正しい知識と理解が促されると期待される。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により発表を予定していた学会が中止となり、旅費の支出が大きく減少した。また物品費については、予定していた圧縮成形法による放射線源の作製方法を簡素化した為に線源作成費用の支出が減少した。一方、研究推進方策で記したように次年度は新規放射線源の作製に着手する為、機器の購入費用に使用予定である。
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Research Products
(3 results)