2019 Fiscal Year Research-status Report
心理学研究における中級程度のベイズ統計学の教授法に関する研究
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19K03269
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
豊田 秀樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60217578)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心理統計で何を教えるべきか / 研究仮説が正しい確率 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本心理学会第83 回大会・公募シンポジウム「心理統計で何を教えるべきか」において「これからの統計教育」と題した講演を行った。そこで(1)頻度論とベイジアンの対立は既に消滅している。(2)頻度論における尤度原理は、ベイジアンと融合し、統計学・AIの現在・これからの本流である。(3)頻度論の1分野である有意性検定は時代的使命を終えている、という主旨の公演を行った。 「瀕死の統計学を救え! 有意性検定から「研究仮説が正しい確率」へ」というタイトルの単著(144p)を朝倉書店より公刊した。2019年3月、統計学に関する2つの衝撃的な論文について論じた。1つはアメリカ統計学会ASA 監修 The American Statistician の「21世紀の統計的推論 : “p < 0.05”を超えて」である。本論の章タイトルは、Don't Say “Statistically Significant”であり、命令形ではっきりと有意性検定を禁止している。もう1つは Nature の「統計的有意性を引退させよう」である。このコメント論文には800人以上の科学者が賛成の署名をしており、「統計的有意性の概念全体を放棄するように求める。」と主張している。その主張に沿った解説を展開した。 また大学における授業評価アンケートについて,学生が授業において最重要視する知見は何かを明らかにする方法として,一問一答形式を用いた自由記述による意見収集に着目した。この際における知見の得られ方の寡占的(支配的)な程度を,ジップ分布の母数によって表現した。また,ジップ分布から算出される累積確率を用いて,観測された印象の飽和度について,特定の飽和度を達成するために必要な異なる要素(評価,印象)の数と合わせて結果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジップ分布から算出される分析には,教授者が想定しないような意見の回答に対応するため,要素数を無限とする場合と,あらかじめ決まった要素から回答するそれぞれの場合に対応したジップ分布を用いた計算結果を示した。実際の講義の評価データの分析を通じ,本方法によって,自由記述による授業評価で得られる知見に対し,少ない特定の知見が全体の中で支配的であるのか,それとも印象,評価が定まらず,多様な知見が散見されているのかについて,客観的な指標に基づく考察が可能となることが示された。今後も注意を怠ることなくデータ収集を続けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
テストデータを対象として,受験者の潜在的な特性と項目特性を分離して分析するためのテスト理論に項目反応理論 (IRT) がある。通常,IRT では受験者が所属する下位集団に関わらず,同じ特性に関する値を有していれば,同一項目に正答する確率も同じである仮定される。もし,性別や人種といった属性別で,同一項目に対する正答確率が変化する場合,当該項目は特異項目機能(DIF)を有するといわれる。測定の公平性の観点からDIFは望ましくないため,DIF の分析は大きな関心を寄せられてきた。IRT に基づいたDIFの検討において,広く用いられてきたDIF検出法は統計的仮説検定に基づいている。本研究では,ラッシュモデルにおける均一DIFを対象として,ベイズモデリングに基づいたDIF検討方法を提案する。提案手法を用いることで,下位集団ごとに項目母数を別々に推定し,更に等化係数を推定するという手順を一括して扱うことができる。また,DIF の大きさとそれに対する確信度を考慮可能な指標の提案も行いたい。
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Research Products
(5 results)