2020 Fiscal Year Research-status Report
Arithmetic study of regulators using special functions
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19K03391
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
朝倉 政典 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60322286)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レギュレーター / 代数的K理論 / 超幾何関数 / L関数 / p進L関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
代数多様体のレギュレーターおよびL関数の特殊値について研究している。 レギュレーターの歴史は、19世紀におけるディリクレの解析的類数公式にさかのぼる。ディリクレは、代数体の単数群が対数関数を使って有限次元ベクトル空間へ格子として埋め込まれることを示し、その格子の判別式としてレギュレーター(ディリクレ・レギュレーター)を定義した。最も大きな特徴はそれがゼータ関数のs=1での特殊値を与えることである。この公式をモチーフという枠組みの中で一般化したのが、ベイリンソン予想である。ベイリンソン予想においては、ゼータ関数はモチーフのゼータ関数に一般化され、レギュレーターはモチーフのレギュレーターへ一般化されている。多くの研究者が、様々なアプローチ、様々なアイデアを駆使してこの問題に取り組んでいるものの、解決への道のりは遠く、まだまだ乗り越えるべき課題は多い。 本研究課題においては、特殊関数とりわけ超幾何関数を用いた新しいアプローチでベイリンソン予想の研究に取り組んでいる。2020年度においては、2つの論文を書き上げ、プレプリントサーバー(アーカイブ)にて公開した。(1)「Rossのシンボルの高次K群への一般化」フェルマー曲線のK_2にはRossが構成した元がよく知られているが、高次K群に一般化した元を構成した。2019年度に高次Rossシンボルのベイリンソン・レギュレーターについて論文を書いたが、今回はそのp進版を完成させた。(2)「ミルナーK群のシンボル写像とアイソクリスタルの拡大について(宮谷和暁氏との共同研究)。ミルナーK群から、サントミックコホモロジーへのシンボル写像は、加藤和也・辻雄によって定義されたが、その写像のアイソクリスタルの拡大列としての記述はこれまでに存在していなかった。今回、それを完成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度においては、レギュレーターと特殊関数の研究において下記のような進展があった。 (1)2019年度において着想を得た超幾何ファイブレーションの高次元化について、その証明を完成させた。また、この超幾何ファイブレーションの高次元化のミルナーK群において、新しいミルナーシンボルを定義し、高次ロスシンボルと名付けた。特に高次ロスシンボルのp進レギュレーターを研究し、興味深い性質をいくつか証明した。これらの成果を2編の論文にして書き上げた。現在プレプリントサーバー(アーカイブ)にて公開しており、投稿予定である。 (2)ミルナーK群から、サントミックコホモロジーへのシンボル写像は、加藤和也・辻雄によって定義されたが、その写像のアイソクリスタルの拡大列としての記述はこれまでに存在していなかった。2020年度において、宮谷和尭氏と共同で、その構成を行った。数年前の宮谷氏との共同研究で2次ミルナーK群のシンボル写像について構成していたが、今回、そのときに使ったアイデアを発展させることによって、次数についての制限を完全に取り除くことができた。この成果は論文として書き上げ、現在プレプリントサーバー(アーカイブ)にて公開中であると同時に、専門誌へ投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に得られた上記の成果について、さらに発展・深化させることを行う。 (1)超幾何ファイブレーションの高次元化および高次ロスシンボルという新しいモチフィックコホモロジーの元を定義したので、次の課題は、それらのレギュレーターとL関数の特殊値についてである。特に、ある種の特別な超幾何ファイブレーションはK3曲面になることが分かっており、その曲面の高次ロスシンボルのレギュレーターとL関数の特殊値について研究に取り組む。この研究は、今までに類似の研究が存在しておらず、レギュレーターの研究において新しい領域を切り開くきっかけになるだろうと期待している。 (2)(1)で行った研究のp進版、すなわちp進ベイリンソン予想について取り組む。2019年から2020年において行った千田雅隆氏、F.Brunault氏との共同研究では、楕円曲線の2次のミルナーK群とそのp進レギュレーターを研究した。今後は、その高次元化、特に(1)と同じ設定で、K3曲面のp進ベイリンソン予想に取り組む。この研究においては、宮谷和暁氏と共同で行ったミルナーK群のシンボル写像とアイソクリスタルについての結果が基本的な道具として必要である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響のため、予定していた出張がすべてキャンセルになり、旅費として計上していた使用予定額のほとんどが消化されなかった。旅費として使用予定だったものの一部については、老朽化した計算機の新規購入などにあてた。 次年度は、引き続き計算機環境の整備費にあてるほか、新型コロナウイルスの影響が軽減され次第、国内出張旅費および国内研究者の招聘のための予算として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)