2019 Fiscal Year Research-status Report
The Stokes phenomenon on linear or nonlinear, differential and differential equations
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19K03566
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
大山 陽介 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (10221839)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | q-超幾何函数 / 漸近展開 / q-パンルヴェ 方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
q-超幾何函数の接続問題について考察した。q-超幾何函数の接続問題については前年度までに大きく進んでいたが,原点もしくは無限遠の一方が(強い意味で)確定特異点をもつ場合に,接続公式およびストークス現象を完全に決定することに成功した。 q-超幾何函数のストークス現象は2階まではすでに決定できており,前年度の段階では,3階まで完成していたが証明方法が複雑で一般化が難しいように思えた。今年度の前半において,任意の階数のq-超幾何差分方程式で,無限遠が(強い意味で)確定特異点を持つ場合のストークス現象を完全に決定することに成功した。今の場合,原点でのニュートン図形は3つの辺を持ち,0次を含む辺に対応する解は収束,その次の辺は発散するq-超幾何級数,残る辺は発散する分岐級数になり,最後の級数に関するストークス現象が難しかった。この分岐級数に対して2回q-ラプラス変換を作用させ,双方向q-超幾何級数の接続公式を用いることで,q-超幾何差分方程式のストークス現象を記述することに成功した。 本年度の研究のもう一つの結果は,これも長年の課題になっていたq-パンルヴェVI型方程式の指標多様体の記述である。J.-P.Ramis, J.Sauloyとの共同研究であるが,とりあえず一つの記述に成功した。 本研究は,夏にヴェルサイユ大学・ストラスブール大学を訪問した時に得られたもので,リール大学のChanggui ZHANG氏との共同研究になるものである。この研究をさらに進めたかったが,3月に行われる予定だったリール大学の研究会がコロナウイルスの拡散でキャンセルになって進められなかったのは残念である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要に記したように,新型コロナウイルスの拡散で3月に渡仏して共同研究を仕上げるつもりができなかった。3月の研究会は無期延期になっているが,できれば令和2年度中に実施できればと思っている。q-超幾何方程式の接続問題およびq-Stokes問題については,ある程度満足の行くところまで進んだが,完全な解決にはあと一歩である。この点については,もう2,3年前からの残された課題であるのでやりとげなければならない。残るは(広い意味の)不確定特異点を二つ持つ場合のみになっている。もう一つは,q-超幾何方程式の接続問題をq-パンルヴェ方程式に応用することである。これについては,q-パンルヴェVI型方程式についてはまずまずのところまで進んだが,それ以外のq-パンルヴェ方程式についてはまだ仕上がってない。q-パンルヴェIII型,V型方程式についてはだいたいの概要はできているので,あとは時間をかけて仕上げるだけである。また,指標多様体についての研究も残っている。 また,それ以外の(q-)パンルヴェ方程式の漸近解析もまだ手がついていないので,これらについては令和3年度の課題になるかもしれない。 問題としては,新型コロナウイルスの拡散の問題はいまだに終息の兆しを見せておらず,海外渡航の禁止がいつ解除されるか明確ではない点である。講義などもオンラインで行うようになっているが,国際的な共同研究もZoomその他で進めることを今後は考えなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もq-差分方程式で超幾何系とパンルヴェ方程式の研究を行なっていく。 q-超幾何系では,原点と無限遠の両方が不確定特異点になる場合が未解決である。2階の場合のq-Weberはできているので,高階への一般化をすすめていく。今すでにできている,無限遠が確定特異点の場合だけでも,q-パンルヴェ方程式への応用には十分使える。q-パンルヴェ方程式で不確定特異点をもつ場合が最初の攻略点になる。この問題もトゥールーズ大学の研究者との共同研究になるが,現状ではすすめにくい状態である。日本側だけでやらなければいけない問題が多いので,やれることは多い。また高階のq-パンルヴェ方程式への応用は,高階q-超幾何系がほぼできたので容易である。高階q-超幾何系の接続問題ができれば応用はたくさんあるので,当初考えてなかった接続問題の応用例についても考察できればと思っている。 E型q-パンルヴェ方程式の場合を考察しなければいけないが,おそらく超幾何系の接続問題を少し一般化して考えなければいけないのと,いずれにしてq-ニュートン級数の場合を扱う必要はいろんな状況で出てくると思うので,接続公式のいくつかの変形を考える必要があるだろう。双方向超幾何級数などの接続問題も視野に入ってはくるが急務とは言えない。 新型コロナウイルスの拡散の問題はいまだに終息の兆しを見せてはいないが,国際共同研究を進めにくい状況が続けば,パンルヴェ方程式の楕円漸近解析など単独研究を中心に研究していく。パンルヴェ微分方程式じたいの研究がややおろそかになっているが,本研究の基盤はパンルヴェ微分方程式の非線型ストークス現象の解明である。
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Causes of Carryover |
令和2年3月にフランス・リール大学で開かれる予定であった国際研究会"Differential and Difference Equations: Analytic, Arithmetic and Galoisian Approaches"の組織委員の一人として参加する予定であった。そのために海外渡航費用を残していたが,新型コロナウイルスの拡散によってフランスを含む欧州への渡航が困難になり,かつ研究会自体も中止せざるを得なかったために渡航を中止した。残った残額322,182円は渡航しておれば0になったものである。当然ながら,次年度に国際研究会をやり直すことを検討中であるが,コロナウイルスの状況でどうなるか現時点では明確なことを言えない。国際的に危機的な状況であり,この点については例外的な事情としてご理解いただければと思います。
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Research Products
(6 results)