2020 Fiscal Year Research-status Report
計算可能性理論,記述集合論,位相空間論における階層の究極的解析
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19K03602
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木原 貴行 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (80722701)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 記述集合論 / 計算可能性理論 / ヴェブレン階層 / 整列擬順序 / 余解析的集合 / 超算術的階層 / クラスカルの木の定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,まずは最初の目標として掲げていた Louveau の分離定理のベター擬順序値関数への拡張を,指導学生の笹木健太氏と共同で達成した.このための道具として, Wadge 次数をある種の代数的言語の項として表現するシンタックス的手法を整備した.この言語は,クラスカルの木の定理の無限化を扱う言語に加えて ω_1 ベースの Veblen 関数を組み込んだ強力な言語で,非常に複雑な組合せ構造を取り扱うことができる.Louveauの分離定理は,位相的概念(太字類)を計算的概念(細字類)に変換する強力な実効化定理であるが,ただこれを関数へ拡張するだけでなく,太字関数の細字全域拡張,細字支配に関する定理などの様々な変種も証明することができた.この結果は論文としてまとめ,数理論理学の専門誌に投稿中である. さらに,第二の目標として挙げていた,ボレル可測を超える複雑性として,余解析集合の差の階層の Wadge 次数の分析の研究を大きく発展させることができた.まず,決定性公理の仮定下で,余解析集合の下降差の階層と Wadge 階数 ω_2 の対応を述べる Kechris-Martin の定理のより構成的な別証明を与えた.さらに,余解析集合の上昇差と下降差のギャップに関する Fournier の問題に解決を与えた.このために,有限心変わり付き超算術的還元の手法を導入し,Σ^1_1-最小値原理,Π^1_1-最小値原理との対応についても明らかにした.この結果をまとめた論文は,現在準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Louveauの定理のベター擬順序値関数への拡張は当初の計画通りであるが, Kechris-Martin の定理の別証明の発見や, Fournier の問題の解決は,想定以上の結果であり,当初の計画以上の結果を得ることができた.第一の結果については,結果自身だけでなく,ボレル可測関数の Wadge 次数に対するシンタックス的手法を整備できたという点が大きい.第二・第三の結果についても,結果自身はもちろん,有限心変わり付き超算術的還元の理論を整備できたという点が理論自体の大きな進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最大の目的は, Solecki のダイコトミーとマーティン予想の関連性を追求するものである.この関連性は,報告者と R. Carroy 氏との共同で2018年に発見されたものであるが,2020年度末に,カリフォルニア大学バークレー校の研究者である P. Lutz 氏らによって,この報告者らの発見の分析が推し進められ,順序保存写像に対する第一マーティン予想の解決が宣言された.これは,報告者が計画書に記した予想が正確であったことを証明したものである.今後の研究として, Lutz らの結果の分析を推し進め, Solecki のダイコトミーとマーティン予想の更に深い関連性を追求していく. それ以外の研究方策としては,次年度以降も,今年度に引き続き,ボレル可測でないものを含む関数の Wadge 次数の分析を進め,特に,そのシンタックス的手法を確立させる.
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため,予定していた国際会議参加や国際共同研究実施のための出張等が中止となり,予算を使い切れなかった.
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Research Products
(7 results)