2019 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of electron-capture and beta-decay rates at stellar environments and nucleosynthesis
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19K03855
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 俊夫 日本大学, 文理学部, 教授 (70139070)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電子捕獲 / ベータ崩壊 / 元素合成 / 殻模型 / ニュートリノ‐原子核反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 電子、イオンのスクリーニング効果の寄与を取り入れた弱遷移率の評価を、pf殻核で系統的に行った。GXPF1J相互作用ハミルトニアンを用い、高密度、高温の天体条件下での精密な電子捕獲率、β崩壊率、ニュートリノ放出エネルギー消失率、ガンマ線エネルギー生成率を評価し、元素合成や星の進化の天体計算の有効利用に供するため表としてまとめた。 2 20Neからの第二禁止遷移による電子捕獲率をWaleckaの多重極展開の方法によって精密に評価した。20Fからのβ崩壊率の実験データを基に、あたかも許容ガモフ・テラー遷移として扱って評価した従来の遷移率との比較検討を行い、両者の密度依存性には形状因子の電子エネルギー依存性の違いに起因する有意な差があることを明らかにした。新しい電子捕獲率を 8-10太陽質量の星の進化におけるO-Ne-Mgコアの加熱過程の研究に応用し、星の終末がNeが電子を大量に捕獲することによって引き起こされるコアの重力崩壊と中性子星形成を伴う電子捕獲型超新星爆発であることを確かめた。一部の星では質量損失が大きい熱核爆発を起こしてMg-Ne白色矮星が形成されることもある。 3 78Niからの電子捕獲率における第一禁止遷移の寄与を、従来のpf-g9/2d5/2 配位から拡張したpf-gds殻配位空間での殻模型計算によって評価した。gds殻の寄与を完全に取り入れることの重要性を明らかにした。また、乱雑位相近似(RPA)による評価との比較を行った。 4 将来の超新星ニュートリノ検出のため、超新星エネルギー領域でのニュートリノ-13C核反応断面積を、ニュートリノ-12C反応断面積の評価に成功した相互作用ハミルトニアン(SFO)を用いて種々のガンマ線、粒子放出チャネルに対して評価した。また、コヒーレント弾性散乱の断面積の評価を行い、原子核の中性子分布の測定に対する有効性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 スクリーニング効果を入れたpf殻核での弱遷移率の系統的な表の作成が完成した。 スクリーニング効果を入れたpf殻核での電子捕獲率のIa型超新星爆発における鉄族元素の合成への適用と、スクリーニング効果を入れない場合との比較を含めた研究が開始できる段階になった。 2 20Neにおける第二禁止遷移の電子捕獲率の精密評価を、8-10太陽質量の星のO-Ne-Mgコアの進化と星の終末のシミュレーション計算のプロジェクトに応用することができた。さらに、横波の電気4重極遷移の部分の評価方法の改良の効果の影響を調べ始めた。主要な結果への影響は限定的になる見込みである。 3 中性子数N=50の中性子過剰アイソトーンからの電子捕獲反応の研究の第一歩として、78Niからの第一禁止遷移をpf-gds配位空間での殻模型計算で評価できるようになった。 4 ニュートリノ-13C反応のガンマ線、中性子放出チャネルおよびコヒーレント弾性散乱の断面積の評価によって、超新星ニュートリノの検出、および原子核の中性子分布への応用の可能性が開けた。
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Strategy for Future Research Activity |
1 中性子数 N=50のアイソトーンからの電子捕獲は超新星爆発のコア崩壊過程で重要な役割を果たす。78Niに続いて、N=50アイソトーンからの電子捕獲率をpf-gds配位空間での殻模型計算によって系統的に評価するのが、次の重要課題の一つである。 2 スクリーニング効果を入れたpf殻核での電子捕獲率をIa型超新星爆発における鉄族元素の合成等へ応用して、スクリーニング効果の寄与の重要性を調べる。 3 sd-pf殻核のA=31, 33 ペアー核等で、G-行列を拡張した方法(EKK法)を用いて天体環境での弱遷移率を評価する。この方法は逆転の島の核領域での核構造の研究に非常に有効である。逆転の島の核領域での弱遷移は中性子星クラストにおける冷却現象、すなわちUrca過程に重要である。 4 20Neにおける第二禁止遷移の扱いを、①横波の電気4重極遷移の部分の評価方法を改良する、②Behrens-Buhringの方法を用いることによって電子のクーロン波動関数と遷移演算子が結合する効果を取り入れ、より精密な電子捕獲率を求める。8-10太陽質量の星のO-Ne-Mgコアの進化と星の終末のシミュレーション計算に適用して、これまでの主要な結果がどの程度ロバスト(頑健)であるかを調べる。 5 19Fの合成に重要なニュートリノ過程であるニュートリノ-20Ne反応断面積を再評価する。粒子、ガンマ線放出チャネルへの分岐比をハウザー・フェッシュバッハの統計的方法で求める。多粒子放出まで含めるので、従来の計算との違いが現れることが期待される。
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Causes of Carryover |
国際会議出席のための海外出張の際、滞在費の補助を受けたため余剰金が生じた。次年度の出張の際の旅費に加える予定である。
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Research Products
(21 results)