2020 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of electron-capture and beta-decay rates at stellar environments and nucleosynthesis
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19K03855
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 俊夫 日本大学, 文理学部, 教授 (70139070)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電子捕獲反応 / ベータ崩壊反応 / 殻模型 / 中性子ドリップ線 / 中性子ハロー |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 中性子星クラストでのUrca過程に重要な役割をする sd-pf殻ペア―核、31Al-31Mg、間の天体環境下での弱遷移率をG-行列を拡張した方法(EKK法)を用いて評価した。また、A=61ペア―核、61V-61Cr、間のガモフ・テラー遷移率をpf殻の範囲で評価し、基底状態間の遷移強度が最近の実験値を再現することを示した。これは、このA=61ペア―核が従来考えられていた程はUrca過程に寄与しないことを示唆する。 2. 中性子ドリップ線(存在限界)を決めることは、天体での元素合成の研究に重要な意味を持つ。フッ素、ネオン、ナトリウム、マグネシウム同位体では、原子核の形が球形から楕円体へ変形して起こる結合エネルギーの増減がドリップ線の決定に重要であることを、基本的な核力を用いた第一原理的な大規模殻模型計算によって示した。理論計算によるドリップ線、31F, 34Ne, 39Naは実験を再現し、42Mg がドリップ線であることを予言した。 3.これまでで最も重い二中性子ハロー核29Fの発見の研究に参加し、ハローの構造と半径の増大を最先端の方法で導き出された核力と広い配位空間(sd-pf殻)を用いた殻模型計算で説明することに成功した。これは中性子過剰核での従来の標準的な中性子(n)の魔法数N=20の消失に対応し、軌道角運動量1の2p軌道から成るハローが形成されていることを示す。n‐27F‐nの3体系として束縛するという典型的なBorromeanリング構造を持っている。 4. 17B, 19B の二中性子ハローの構造を、n‐コア-n のBorromean構造を持つとして、三体模型を用いて低エネルギーの中性子‐中性子間力を基に研究した。17Bの二中性子は角運動量2のd-軌道が主要な成分であること、19Bは角運動量0のs-軌道成分が約40%、d-軌道成分が約60%であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中性子過剰核のドリップ線の位置とドリップ線上のハロー核の研究は著しい進展があったが、(1)中性子数N=50近傍の中重核の弱遷移率の評価、(2)ニュートリノ‐20Ne 反応の多粒子放出を含む種々の分岐への断面積の評価、(3) 20Neの第二禁止遷移のより精密に評価した弱遷移率の8-10太陽質量をもつ星の終末のシミュレーション計算への適用、などの研究はCOV19の影響により共同研究者との往来や議論が十分にできなかったため、予定より遅れている。 (1)については、78Ni以外の核への研究の拡張が予定通り進んでいない。(2)については、様々のチャネルへの分岐比の計算が滞っているため予定通り進んでいない。(3)については、①横波の電気4重極遷移の部分の評価方法を改良する、②Behrens-Buhringの方法を用いることによって電子のクーロン波動関数と遷移演算子が結合する効果を取り入れ、より精密な電子捕獲率を求めることは完成したが、共同研究者が来日できなかったので、天体の詳細なシミュレーション計算は予定通り進まなかった。 また、COV19のため、出席予定の国際会議が延期されて出席できず、研究成果の発表や研究推進、共同研究のための議論、打合せが十分できなかった。 以上のような事情にもかかわらず、酸素同位体の場合のようなモノポール項による従来の殻進化ではなく、ネオン、マグネシウム等では原子核の変形による4重極項による新たな殻進化のメカニズムによってドリップ線が決まることを発見し、Nature誌に出版できたことは大きな成果であった。また、29F核で新たに発見された二中性子ハローの構造を解明できたこと、17B, 19Bの二中性子系の構造を三体模型によって解析し、実験との整合性が得られたことも大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. A=61核ペア-、61V-61Cr、のガモフ・テラー遷移強度分布をpf-gd殻まで拡張して評価し、天体環境下での電子捕獲率、ベータ崩壊率を求め、中性子星クラストでのUrca過程においてこの核ペア―が担う役割の度合を調べる。 2. 超新星のコア崩壊時に重要な役割を果たす中性子数N=50核、80Zn, 82Ge からのガモフ・テラー遷移強度、スピン双極子遷移強度をpf-gds殻の殻模型で評価し、天体環境下での電子捕獲率を求める。高温においてガモフ・テラー遷移のブロッキング効果がどの程度緩和されるのか、スピン双極子遷移による禁止遷移がどの程度重要になるのかを調べる。 3. 中性子ドリップ線近傍核の研究の成果をもとに、ドリップ線近傍の軽い中性子過剰核の構造がr-過程による元素合成にどのような影響を及ぼすかを、超新星爆発、中性子星合体、電磁流体回転ジェット過程などの様々な天体過程で調べる。どのような天体環境でより重要な効果を担う可能性があるかを研究する。 4. 弱中性カレントによるニュートリノ-16O反応で放出される低エネルギー(4-5 MeV)ガンマ線を測定して超新星ニュートリノの検出を行うために、反応断面積の精密な評価を行う。アップデートされた Super-Kamiokande での検出条件を利用した、将来の超新星爆発による超新星ニュートリノの時間を追った観測に備える。 5. 進展が遅れているテーマの研究の推進を計る。
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Causes of Carryover |
COV19のため、出席予定だった3回の国際会議、国際シンポジウム、国際ワークショップが全て1年以上延期になった。そのため海外出張が不可能になり、海外出張の旅費が使用できなかった。 今年度開催予定の内外の国際会議、シンポジウムに出席するため海外出張及び国内出張を行い、旅費として使用する予定である。
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[Journal Article] Two-Neutron Halo is Unveiled in 29F2020
Author(s)
S. Bagchi, R. Kanungo, Y. K. Tanaka, H. Geissel, P. Doornenbal, W. Horiuchi, G. Hagen, T. Suzuki, N. Tsunoda, D. S. Ahn, H. Baba, K. Behr, F. Browne, S. Chen, M. L. Cortes, A. Estrade, N. Fukuda, M. Holl, K. Itahashi, N. Iwasa et al.
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Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 124
Pages: 222504/1~7
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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