2020 Fiscal Year Research-status Report
Grand Unified Theory indicated by Higgs Mass and Study of Proton Decay
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19K03865
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中野 博章 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60262424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 治 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任准教授 (40547741)
山下 敏史 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90622671)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 素粒子論 / ゲージ・ヒッグス統一模型 / 超対称大統一模型 / 量子異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、中間スケールのディラック型ゲージーノ模型を「ヒッグス質量が示唆する大統一理論」の有力候補と捉え、前者をより強固な理論的基盤の上に展開するために、模型全体を5次元オビフォルド時空に基づくゲージ・ヒッグス大統一模型に埋め込むことで、ゲージーノのディラック質量項の起源を明らかにするとともに、大統一スケールを精度よく決定し、さらには陽子崩壊過程を通じた検証可能性を探ることを目指すものである。 2019年度は、まず簡単なゲージ・ヒッグス大統一模型から出発して、1)対角埋め込みにより、ゲージーノとディラック質量を組む随伴表現場が得られることを確認し、さらに、2)ゲージーノ質量項(正確にはsupersoft項)の起源を与える5次元チャーン・サイモン項(CS項)が量子異常を通じて生成される機構を離散対称性の破れの観点から明らかにした。また、3)同じ結果がカルーザ・クライン・モード(KKモード)の足し上げからも得られることをいくつかの極限的な場合に確かめた。その途中経過は、複数の国内学会・研究集会および国際会議1件で発表した。さらに、量子異常を通じないでCS項が生成される可能性を見い出した。 2020年度は、量子異常に寄与するゼロ質量フェルミオンが存在しない場合に、CS項の生成過程および整合性条件を詳しく吟味し、4)生成されたCS項が表すゲージ対称性の破れは、オビフォルド境界条件から排除されるものに対応し、矛盾は生じないことを明確した。さらに、予備的解析により、5)随伴スカラー場の期待値(ウィルソンライン)依存性から、大統一条件を満たさないゲージーノ質量が予言される可能性を見い出した。 現在は、1~2)と3~5)を整理しなおした論文を準備中である。 中間スケールにおける超対称粒子の質量スペクトルを考慮した、ゲージ大統一条件の吟味については、数値解析コードの検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度において、研究実績の概要にある結果1)2)3)をまとめた論文原稿を作成中に、量子異常を通じずにチャーン・サイモン項を生成できる可能性を見い出した。つまり、3)のカルーザ・クライン・モードの足し上げの方法を、量子異常を生じるゼロ質量モードが存在しない場合に適用したところ、当初の予想に反してチャーン・サイモン項が生成されることがわかった。 予想に反する結果が得られた直後は、その解釈や結果の整合性(ゲージ不変性)を巡って混乱したが、2020年度初めになって、論文の投稿をいったん延期し、整合性の吟味を進めることとした。整合性の吟味は予想より時間がかかってしまったが、その過程で、非自明なウィルソン・ライン依存性を見い出したことで、結果的には当初の予想より豊かな構造が見えてきており、着実に成果が蓄積しつつあるといえる。現在は、初年度からの成果をまとめた論文の完成を急いでいるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
トップダウンのアプローチにおいては、前年度に引き続き、バルク場のゼロモードが存在する場合としない場合のそれぞれを比較検討する。チャーン・サイモン項は、前者では量子異常からも確認できるが、後者ではカルーザ・クライン・モードの足し上げだけから得られる。そのそれぞれの場合で、生成されるチャーン・サイモン項の特徴を調べ、そこから得られるゲージーノ質量項の大きさを見積もる。その際に、5次元SU(5)ゲージ場の期待値(ウィルソン・ライン)の依存性が、ゲージーノ質量の大統一条件の破れをもたらす可能性に注意して検討を進める。両者の結果を総合し、SU(3)ゲージーノとSU(2)ゲージーノの質量比と全体の質量スケールの相関関係を明らかにすることを目指す。 ボトムアップのアプローチにおいては、中間スケールにおける超対称粒子の質量スペクトルを考慮した大統一条件の定量的解析を進める。簡単化した場合に対する予備的解析を拡張し、より一般的状況での計算を本格的にスタートさせる。特に、ディラック型ゲージーノ質量自身が大統一条件を満たす場合とそうでない場合のそれぞれで、ゲージ結合定数の大統一が実現される条件を解析する。具体的には、軽いヒグシーノ質量をパラメータとして大統一が実現する解を求め、結果として得られる大統一スケールのパラメータ依存性を系統的にスキャンする。 次の大きな課題である陽子崩壊の検討に進むため、まず、三世代の物質場を含むゲージ・ヒッグス大統一模型を、大まかな構造のみを考慮して、簡単に考察する。次に、陽子崩壊を媒介する可能性のある大統一ゲージ粒子および第一カルーザ・クライン粒子の波動関数について解析的な表式が得られないか検討する。その結果に応じて、陽子崩壊の評価に重要になる第一世代クォークとの相互作用の特徴をどこまで明らかにできるかを考察し、最終年度の準備とする。
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Causes of Carryover |
2020年3月に参加予定であった日本物理学会年次総会が新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴って開催中止になり、院生二名分の出張が取り消しになった。(学会における研究発表は概要集およびスライドの提出をもって成立した。) 2020年度も、若手夏の学校の中止により院生の出張が取消になった。(代替の若手オンライン研究会が企画され、口頭発表は実施できた。)さらに、秋春二回の日本物理学会分科会・年次総会を含め、多くの研究集会が中止またはオンライン開催に変更されたため、代表者および分担者が旅費を執行しなかった。 使用計画としては、2020年度に引き続き、研究打ち合わせのためのweb会議システムの環境整備やZoom使用ライセンス購入などにあてるほか、2021年度は計算機環境整備のためのPC購入および謝金を検討する。年度後半から最終年度にかけては、出張が可能になった時期に、集中的に研究打ち合わせを行う予定である。
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