2020 Fiscal Year Research-status Report
東シナ海の海面水温前線の長期変動とその大気への影響の解明
Project/Area Number |
19K03960
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 克徳 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50604815)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 大気海洋相互作用 / 黒潮 / 梅雨前線 / 領域海洋モデル / 東シナ海 / 地球温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀の東シナ海の海面水温上昇について明らかにするために、前年度に行った高解像度の領域海洋モデルROMSを用いた東シナ海と黄海を含む海域の1871~2010年の過去再現実験について、潮汐と長江による淡水流入の影響を加えた追加の実験を行った。その結果、潮汐と長江による淡水流入の影響を加えても東シナ海の海面水温上昇の空間パターンは定性的には変化せず、黒潮流軸付近と中国沿岸域の2つの領域で海面水温上昇が大きいことが明らかになった。また海面水温上昇の季節依存性についても変化は見られなかった。しかし中国沿岸域では、潮汐と長江による淡水流入の影響を加えることにより海面水温上昇の振幅は若干小さくなった。これに対して黒潮流軸上の海面水温上昇の振幅は変化しない。以上の結果は中国沿岸域の海面水温上昇を再現するためには潮汐と長江による淡水流入の影響を考慮することが必要であることを示す。以上の成果については論文を国際誌に投稿し受理された。 また、この高解像度領域海洋モデルによる海面水温データを用いて、20世紀の東シナ海の海面水温前線の長期変動に対する梅雨前線の応答とその変調について調べた。その結果、6月の海面水温前線の強さと東シナ海から九州にかけての梅雨前線に伴う降水量の間に正の相関関係が見られた。この両者の正の相関関係は、これまでも衛星観測による海面水温データを用いた1982年以降の解析では見出されていたが、今回の結果はその相関関係が1981年以前にも成り立っていることを示すものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東シナ海の温暖化についての論文が受理され、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
潮汐と長江による淡水流入の影響によりなぜ海面水温上昇の空間パターンが変化したかについて解析を行う。また2020年度に得られた成果について国際学会で発表をする。
|
Causes of Carryover |
国内・国際会議が中止、あるいはオンライン開催となり、成果発表のための旅費等が減少した。使用計画としては成果を積極的に学会で発表する。
|