2021 Fiscal Year Research-status Report
擬似進行波を用いた誘電泳動の運動解析による細胞等の非接触インピーダンス計測
Project/Area Number |
19K04416
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Research Institution | National Institute of Technology, Kumamoto College |
Principal Investigator |
須田 隆夫 熊本高等専門学校, 拠点化プロジェクト系地域協働プロジェクトグループ, 教授 (10163031)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 誘電泳動 / 複素誘電率 / 浮遊細胞 / 進行波誘電泳動 / 疑似進行波 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶液中に交流電界を印加した際、電界勾配と細胞の導電率、誘電率に関連して発生する誘電泳動力に着目し、力計測から細胞の誘電率・導電率を得るという全く新たな手法により、電極を細胞に接触させることなくインピーダンス・スペクトロスコピーを得る計測システムの確立を目指している。これまでに、直径100μmの領域の周囲に8つの電極を配置した電気8重極電橋システムにより電解質溶液中で、この微小な領域中の任意の点に電界の極小点を発生させることに成功している。これを用いてポリスチレン粒子及び赤血球やiPS細胞を誘電泳動により操作できることを確認した。その移動速度と電界分布の予測値から細胞の誘電率の実数部を見積もることが出来た。さらに周囲溶液の導電率を変化させたときの赤血球、各種白血球等の誘電泳動が負から正へ切り替わる周波数特性の計測を行い、進行波誘電泳動による複素誘電率の測定の基礎データの取得を行ってきている。 2021年度はこれまで得られた知見をもとに非接触インピーダンス・スペクトロスコピー計測システムを構築する予定であったが、本研究の遂行への様々な障害が生じたため、実施できた内容は主に8重極電極によって発生できる電界分布のシミュレーションならびに疑似進行波に関する理論的な考察に止まった。前者については8重極電極の各電極の電位を様々に変化させた場合の電位極小点の位置について、簡易モデルによるシミュレーションにより系統的な調査を行った。その結果、複数の細胞が測定空間にある場合、目的の細胞のみを測定空間に残す手法の確立ができた。後者については、本来進行波では複素誘電率の複素部が誘電泳動力に寄与するが、多電極対による疑似進行波電界では、複素部のみならず実数部も関係することが明らかとなった。これにより擬似進行波誘電泳動力の測定から複素誘電率の複素部を求める場合に修正が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者が2020年度末に所属機関を定年退職となり、再雇用による所属組織変更に伴い、研究環境の維持ができず、新たな所属組織での研究環境の構築に時間を要した。実験に関しては測定環境はなんとか構築できたものの、デバイスを作製するシステムの中の薄膜作製装置の移設はできなかった。この点については豊橋科学技術大学など設備の利用が可能な研究機関の協力を得て製作する予定であった。しかしながら、2020年度から引き続く新型コロナ感染拡大により、度重なる移動制限・自粛により、他研究機関を利用することができなかった。また、同様の理由によりiPS細胞を提供して頂いている長岡技術科学大学での実験ができなかった。このようなことから、計算機による電界分布のシミュレーションと多電極対による疑似進行波による誘電泳動の理論的考察に研究内容が止まり、新たなデバイスを試作して各種細胞による泳動実験を行うに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗が遅れたため研究期間を延長した。従って、今後は本来2021年度に実施予定であった以下の内容を行っていく。簡易モデルからより現実に近い、3次元場での電界溶液中の電気8重極電極による電磁界分布の計算を行い、これによる誘電泳動力と液中での粘性抵抗を含めた細胞の「動き」をシミュレーションする。これと、これまでの実験映像を比較検討し、細胞の誘電体モデルの構築を早急に完成させる。さらに、細胞の誘電率、導電率を誘電泳動力による動きから計測するのに最も効率的な電界分布を発生させるための、電極電圧について、シミュレーションから明らかにする。最終的に、実際の電極による実験により、動きから誘電率、導電率の計測を行い、シミュレーション結果と比較検討することにより、計測システムとしての完成を目指す。
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Causes of Carryover |
当年度においては、研究代表者の所属組織変更に伴う、想定外の障害ならびに新型コロナ感染症拡大に伴う移動制限・自粛による他機関の利用や情報収集が全くできなかったため、研究そのものの進捗が大幅に遅れ、予定していた物品購入、出張の実施ができなかった。このため、次年度使用額が生じた。 このような研究進捗の遅れから研究期間を延長したので、当該研究費は次年度の実験用消耗品の購入ならびに旅費等に充てる予定である。
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