2019 Fiscal Year Research-status Report
新たな電波利用の安全性担保に向けた植込み型医療器EMI評価技術の展開研究
Project/Area Number |
19K04504
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日景 隆 北海道大学, 情報科学研究院, 助教 (30312391)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 体内植込み型医療機器 / EMI / 数値シミュレーション / 干渉電圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,体内植込み型医療機器(心臓ペースメーカ/ICD)の電磁干渉影響(EMI)評価に用いる測定装置について,世界最高水準の感度と試験汎用性の両有を,高精度数値解析による電磁界評価およびマイクロ波回路設計,電気/光変換およびデジタル信号処理回路を内蔵する小型センサー(擬似ペースメーカ)の開発により実現することである。開発した装置を用いて,第5世代移動通信システム(5G),IoT,RFID等のモノの管理・通信装置,および近年普及が進むワイヤレス電力伝送(WPT)装置の電磁干渉影響特性の評価を実施し,植込み型医療機器の実機による試験結果との比較から本研究課題開発技術の有効性を実証する。さらに,取得されたEMI干渉測定データをデータベース化し活用するための検討に発展させ,これにより継続的な電波利用機器の開発および普及促進に必要不可欠である安全性担保に資するあらたなEMIテストベッド実現を目指す。 初年度である本年度の研究実績概要は次の通りである。 (1) 第5世代移動通信システム(5G)の植込み型ペースメーカ(PM)EMI評価の実施 5Gの周波数帯におけるPM-EMI評価系の設計、構築および基本特性取得を行った。 (2) WPT充電装置近傍における植込み型医療器EMI評価に関する研究開発 FDTD法および有限要素法による数値シミュレーションに基づくPM-EMI評価手法の検討を実施した。複数の周波数帯におけるEMI特性について外部電磁界の照射に起因して装置内部回路に発生する干渉信号の推定を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の各項目については,当初の目的に沿った内容で,以下のように進んでいる。 (1) 携帯電話,無線LANあるいはRFID等より高い周波数帯を利用する5Gの周波数帯におけるPM-EMIに評価については,我が国も含め世界的に未実施でありデータがない。そこで,世界に先駆けたPM-EMIデータの取得のための測定系構築を行い,従前の周波数帯と比較した基本特性について成果をいち早く公表した。これらデータは,提案研究の最終目標であるペースメーカEMI評価センサー構築の上で必要不可欠であるため初年度に実施した。次年度以降に構築するEMI評価センサーに必要な回路パラメータを明らかにした。 (2) 電気自動車(EV)等の充電に用いるWPT機器については,不要放射が問題となっており,すでに提案者らはPM-EMI試験を実施して植込み型医療器において無視できない干渉影響が観測されることを明らかにしている。WPT機器はEV充電用のLF帯,モバイル機器充電用のHF帯など使用周波数帯が複数あり,ペースメーカEMI評価センサー構築のためには,複数の周波数帯におけるEMI特性を精度よく取得する必要がある。本年度は,実験により得られた複数の周波数帯におけるPM-EMI特性に基づき,数値シミュレーションを用いることで,外部電磁界の照射に起因して装置内部回路に発生する干渉信号の推定を実現した。 以上のことから,当初提案していた本研究計画にほぼ沿った形で研究が進められており,順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画に示した各項目について,今後の研究の推進方策は以下の通り。 (1) 第5世代移動通信システム(5G)のペースメーカEMI評価技術の開発 5G対応ペースメーカEMI評価センサーの開発および実機検証を行う。前年度に検討を行った5G帯評価試験を発展させ,この時点で確定している第5世代移動通信サービスの周波数・波形を再現した試験を実施する。取得したEMI特性を実現する超小型疑似ペースメーカ回路とこれによるEMI評価センサーを構築し,実機検証を実現する。EMIセンサーは小型のRF回路部,電気-光変換部,光ファイバー,信号処理部により構成し,外部電磁界の照射に起因してペースメーカ内部回路において生じる干渉信号を高精度に再現した信号を取得可能とする。 (2) WPT充電装置近傍における植込み型医療器EMI評価に関する研究開発 WPT機器を対象としたペースメーカEMI評価センサーの実証試験を実現する。前年度の検討により得られたEMI特性を再現する回路パラメータを明らかにした上で,上記(1)において開発したEMI評価センサーにその特性を組込み,干渉評価を実施する。広い周波数帯,複数の信号波形の条件を考慮した干渉信号の測定結果から,WPT利用周波数帯におけるペースメーカEMIの要因分析を実施し,干渉の閾値検索やこれら要因分析に基づく干渉緩和技術の可能性などについて検討する。要因分析には,大型計算機を用いた数値シミュレーションによる電磁界解析およびハーモニックバランス法等の回路解析技術を用いる予定である。
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Causes of Carryover |
2020年2月から始まった新型コロナウィルス対策の影響で,本研究に関するいくつかの打合せおよび会議予定がキャンセル,あるいは延期されている。ただし,研究を進める上での重要な打ち合わせ等は可能な限りオンラインで実施しており,成果公表についても2020年度の夏以降に開催予定である。
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Research Products
(22 results)