2020 Fiscal Year Research-status Report
我が国の道路事業における動物の事故対策とその効果の推計
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19K04671
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊東 英幸 日本大学, 理工学部, 准教授 (70434115)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エゾシカ / ロードキル / 事故分析 / ポアソン回帰モデル / 負の二項回帰モデル / ベイズ統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
道路管理者は野生動物の事故対策として、動物注意標識の設置や衝突事故マップの配布などのドライバーへの注意喚起だけでなく、野生動物が道路に侵入することを防ぐフェンスや野生動物用の道路横断施設の建設を各地で進めている。 また、野生動物の事故発生要因には道路の沿道環境などが影響していると考えられ、それらの事故発生要因については、これまで様々な統計モデルを用いた分析が既往研究で行われているが、どのようなモデルを適用すべきか統一的な見解が無いのが現状である。 そこで、2020年度は、北海道内の一般国道において1kmあたりのエゾシカとの交通事故発生件数が最も多い国道44号、36号、240号を対象として、交通事故分析に関する既往研究で主に使われるポアソン回帰モデル、負の二項回帰モデルに加え、ベイズ統計の3つのモデルを適用し、各モデルの事故発生要因の分析結果の比較や、モデルから推計した事故件数等の予測値と実測値の比較による精度検証を行い、適用したモデルによる比較分析を実施した。 その結果、事故件数はポアソン回帰モデルを適用した予測値が誤差0件で最も精度が高い結果となり、平均値も最も精度が高い結果となった。また、標準偏差は36号の負の二項回帰モデルを除き、どのモデルでも予測値が実測値より小さく推計される結果となり、対象とした事故多発路線においては、有意水準、決定係数、総事故件数の予測精度からポアソン回帰モデルが最も精度が高いことが示された。また、予測値の標準偏差は36号の負の二項回帰モデルを除き、どのモデルも実測値より少なく推計される結果となった。このことから、特定の道路区間で突発的に多く発生している事故多発区間の事故件数をモデルで推計することは難しいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、北海道内の一般国道において1kmあたりのエゾシカとの交通事故発生件数が最も多い国道44号、36号、240号を対象とし、ポアソン回帰モデル、負の二項回帰モデル、ベイズ統計の3つのモデルを適用し、突発的に発生する野生動物の事故の発生要因分析と事故件数予測モデルの構築による比較分析を実施し、我が国における野生動物の事故対策に向けた一定の研究成果を挙げることができた。 しかしながら、2019年度は台湾のロードキル対策の調査などを実施することが出来たが、2020年度は当初予期していなかったグローバルな新型コロナ感染症の感染拡大により、当初予定していた欧米諸国におけるロードキル対策の現地での取り組みに関するフィールド調査や、海外の道路生態学の専門家へのインタビュー調査、また現地でのロードキル対策に関するワークショップの開催等を実施することができず、研究の進捗に大きな影響を及ぼしたと言える。今後も海外でのフィールドワークの実施は難しいと予期されることから、オンラインを活用したワークショップやインタビュー調査の実施、国内での研究の推進などによる一部の研究計画の見直しが必要だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の推進方策として、北海道内で多発しているエゾシカのロードキルの発生要因に関する分析では、その他の事故多発路線を含めた現地調査やモデル構築による比較分析などを実施する予定である。また、仮想市場法を用いたエゾシカの経済価値や、車両の修理に係る費用、事故処理に係る諸費用等を推計し、エゾシカのロードキルによる社会的費用の推計や、構築したモデルを活用して様々な事故対策による保全便益などを推計する予定である。 また、これまでエゾシカを保全対象として分析を行ってきたが、奄美大島のアマミノクロウサギや沖縄県のヤンバルクイナなどのロードキルも深刻な問題となっていることから、研究対象とする動物を拡大し、これらの事故発生要因分析や事故対策の検討なども実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大により、北海道等など他府県での現地調査等が実施出来なかったことや、当初予定していた欧米諸国におけるロードキル対策の現地での取り組みに関するフィールド調査や、海外の道路生態学の専門家へのインタビュー調査、また現地でのロードキル対策に関するワークショップの開催等を実施することができなかったため、当初の予定より使用額が少なくなったため。 今後は、海外での現地調査等は難しいと考えられるため、新型コロナ感染対策を実施したうえで国内での現地調査のための出張旅費への充当や、現地調査で必要な機材の購入費に使用したり、インターネット調査会社を活用したWEBアンケートの実施費用等に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)