2022 Fiscal Year Research-status Report
我が国の道路事業における動物の事故対策とその効果の推計
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19K04671
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊東 英幸 日本大学, 理工学部, 教授 (70434115)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロードキル / アマミノクロウサギ / ヤンバルクイナ / エゾシカ / 事故対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、鹿児島県の奄美大島で深刻となっているアマミノクロウサギのロードキル多発地点の調査と分析を実施した。奄美大島のロードキル多発区間である旧国道58号の網野子エリアと県道85号の湯湾エリアにインターバルカメラを設置し、交通量や速度を調査するとともに、環境省から提供頂いたロードキルデータを基に分析を行い、事故発生確率を算出した。その結果、湯湾よりも交通量が少なく,速度も低い地点である網野子の方がロードキルの発生確率が高くなり,ロードキル発生リスクが高いことが示された。 また、沖縄県のヤンバルクイナのロードキル多発地点である県道2号線の現地調査や、自動車のヘッドライト点灯によるヤンバルクイナの事故対策効果と挙動分析を実施した。NPO法人どうぶつたちの病院沖縄の協力の下、朝の6時~8時にほぼ毎日、ハイビームとロービームのライトを点灯して県道2号線を走行したデータを基に、ヤンバルクイナの飛び出し防止効果を分析した。ヘッドライトの点灯条件・種類別に分析した結果、LEDライトと比較してハロゲンライトのハイビーム点灯時が飛び出し防止に最も効果があることが示された。挙動分析では、LEDライトとハロゲンライトにおいて大きな違いが見られない結果となった。 さらに北海道のエゾシカの事故対策の検討として、事故が多発している国道44号を対象とし、事故対策が実施されていない51.5kp-53.5kpの区間を選定し、フェンス設置による事故対策を実施した場合の費用対効果を分析した。費用対効果の分析にあたり、フェンスの設置コストに加え、フェンス設置による事故削減効果についてポアソン回帰モデルを構築し、便益を推計した。その結果、非市場財であるエゾシカの価値を含めたケースで費用便益比は3.57、50年経過時の便益と費用の差は8,000万円以上という結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、予定されていた海外でのロードキルに関するインタービュー調査や現地調査が実施できていない状況にある。また、より多くのデータを基にロードキルの発生要因の分析を行うための現地調査も十分に実施できていないため、ロードキルに関する研究成果の発表などが予定通り実施できていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、奄美大島のアマミノクロウサギのロードキル発生箇所や、沖縄北東部のやんばるエリアにおけるヤンバルクイナのロードキル発生箇所の現地調査などを実施し、GIS(地理情報システム)などにデータを集約したデータベースを構築し、ロードキル発生要因の詳細な分析と事故対策に向けた検討を行っていく予定である。 また、海外のロードキル対策について十分な調査が出来ていないため、渡航可能な台湾などの先進的なロードキル対策に関する調査なども実施する予定である。 以上の分析結果なども踏まえ、これまでの研究成果について、国内外の学会で研究発表なども行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、国内でのロードキルに関する現地調査や、海外渡航による現地調査、インタービュー調査などが実施できなかったため、学会参加費や出張旅費等に残額が生じた。2023年度は、海外での調査や研究発表なども実施するとともに、国内で実施できなかった調査なども実施して使用する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Book] 野生動物のロードキル2023
Author(s)
柳川久 監修, 塚田英晴 編, 園田陽一 編, (共著)浅利裕伸, 野呂美紗子, 佐伯緑, 立脇隆文, 山本以智人, 内野祐弥, 鈴木真理子, 玉那覇彰子, 亘 悠哉, 湊秋作, 饗場葉留果, 佐藤淳, 末次優花, 浅川満彦, 原文宏, 伊東英幸
Total Pages
340
Publisher
東京大学出版会