2020 Fiscal Year Research-status Report
北宋、遼、金、元における宮廷空間の特質―宮殿、庭園の比較研究を中心に―
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19K04824
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
福田 美穂 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (50379046)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 北宋 / 遼 / 金 / 元 / 宮廷 / 宮殿 / 庭園 / 儀式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、北宋、遼、金、元の宮廷の儀式に関連する歴史記述を、『宋史』『遼史』『金史』『元史』から抽出、読解し、前年度に収集した宮廷儀式そのものの記述の背景の理解につとめた。また、前年度の研究で新たに視野に入れねばならないと判明した、『日下舊聞考』、『元代画塑記』の内容についても検討した。 また、先行研究に示される宮廷の復原図についても、本年度に新たに収集検討した歴史記述を考慮して、再検討した。先行研究:傅熹年『傅熹年建築史論文集』文物出版社、第1版、1998年。Nancy Shatzman Steinhardt, Chinese Imperial City Planning, University of Hawaii Press, Honolulu, 1990。 于杰、于光度『金中都』北京出版社、1989年。Heng Chye Kiang, Cities of Aristocrats and bureaucrats, Singapore University Press, 1999 検討の結果、以下のことを確認した。(1)『遼史』『金史』に関しては、漢文化の儀式や空間を採用しつつも、自分たちのアイデンティの問題を抱えており、単なる漢文化の模倣ではなかった、という書き方が窺えること。この二書は元代に編纂され、漢族と非漢族との合作による歴史書である点に注意して解読する必要があることがわかった。(2)先行研究による復原図は、なお検討の余地がありそうである。というのも、本年度とくに焦点をあてた、遼、金、元の宮廷空間の背景を考慮すると、さらなる考察ができそうだからである。 また、本年度はコロナにより中国現地調査など一切を中止した。そのかわり、儀式は生活習慣にも関連があると思われることから、生活空間とその習慣に着目し、大阪市内に現存する、大正期町家の空間とその食住習慣について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進行している。ただ、前年度、『蒙韃備録』、『黒韃事略』、『宋会要輯稿』、『続資治通鑑長編』も新たに検討対象としたが、後ろの二書は、読解をはじめてみると予想以上に難航したため、きわめて基本的な部分に絞っての検討となった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、中国での現地調査や東京にある貴重書の閲覧もする予定であったが、コロナの状況の長期化に鑑み、移動しなければならないものはすべて割愛し、文字資料の精査に集中する。基本文献である『宋史』、『遼史』、『金史』、『元史』の精読完了を目指し、あわせて『続資治通鑑長編』について基本的な部分を読解する。 また、先行研究の復原図を検討し問題点を整理する。具体的には、宮殿一棟一棟、そして庭園区域ごとに、歴史記述を整理、矛盾点、問題点を列記、妥当な復原図を考案する。
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