2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of a on-line signature verification system
Project/Area Number |
19K04940
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
関 陽子 科学警察研究所, 法科学第四部, 特任研究官 (10356157)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オンライン筆跡 / オフライン筆跡 / 畳み込みニューラルネットワーク / タブレット / 署名 |
Outline of Annual Research Achievements |
タブレットに入力された署名は,筆跡そのものが残らない,オンラインデータから復元された画像は低解像度で原形と異なる,などのように,これまでのオフライン筆跡の形状の細かな特徴を用いて筆者識別を行う手法では対応できない.キャッシュレス決済やオンライン事務処理が今後ますます普及することから,オンラインデータを用いた筆者識別や,オンラインデータから復元された低解像度のオフライン筆跡での筆者識別の機会が増加すると考えられる.このため,従来の筆者識別手法では対応が困難な,これらの筆跡の筆者識別手法を開発するのが本研究の目的である. 令和元年度は,オンライン筆跡の筆者識別手法に関する研究動向の調査と,オンライン筆跡の筆者識別手法に関する知見を得るため,畳み込みニューラルネットワークを用いた低解像度のオフライン筆跡画像の筆者識別実験を行った.筆者識別実験には,10人の筆者が繰り返し5回ずつ筆記した筆跡を用いた.漢字,ひらがな,かたかな,アルファベット大文字・小文字各26字種を用いて,各字種各筆者の4回分4個を学習用データ,1回分1個をテスト用データとして識別,各字種について原画像をランダムに加工して学習用データを各筆者100個作成して識別,同一筆者26字種×繰り返し4回分=104個を学習用データとして識別を行ったところ,いずれの学習用データ増加方法によっても,識別精度が向上することが分かった.また,画線の濃淡や記載位置が他の筆者と異なる筆者の識別精度が高かった.さらに,画線の濃淡や記載位置は,字種が異なっても同じ筆者の中では一貫していた. 以上の知見は,文書解析と文字認識に関する国際会議(ICDAR)に併設されたコンピュータを利用した法科学に関するワークショップおよびアメリカ法科学会(AAFS)で報告した. また,文献調査の成果を科学警察研究所の紀要に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
畳み込みニューラルネットワークを用いたオンライン筆跡の筆者識別についての基礎的な知見を得るために,低解像度のオフライン筆跡を用いて筆者識別実験を行った.その結果,原画像をランダムに加工してデータ数を増やす,同じ筆者の異なる字種を学習用データに使用する,などの方法を用いて学習用データを増やすことにより,低解像度の画像であっても筆者識別精度が改善することがわかった.また,文字の細かな形状を識別のための手掛かりとして利用できないような低解像度の画像であっても,文字の配置や画線の濃淡などは,筆者固有の特徴として識別に利用できることもわかった.オンライン筆跡では,筆圧や書字速度の情報が得られ,これらの情報は筆跡画線の状態に反映されることから,これらの知見は,オンライン筆跡の筆者識別手法開発のための基本的な情報となる.研究期間初年度に基礎的な知見を得ることができたため,2年目以降の研究の方向性を見出すことができた.2年目以降は,これらの知見を利用してオンラインデータや低解像度の復元オフラインデータの筆者識別実験を行うことにより,オンライン筆跡の筆者識別手法の開発に応用できると考えられるため. また,当初は予定していなかったが,これらの知見を文字認識や法科学の国際学会で報告することにより,文字認識の最新技術や研究動向に関する情報を収集したり,現在行っている研究に関する助言を得ることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
低解像度のオフライン筆跡を用いて畳み込みニューラルネットワークにより筆者分類を行ったところ,人間が行う筆者識別と異なり,人工的にオリジナル筆跡をさまざまに変形させてデータを増やすことにより作成された筆跡画像や,同じ筆者の筆跡ではあるが異なる字種の筆跡であっても,学習用データの数が多ければ,筆者の一貫した特徴が抽出できることがわかった. これらの知見をもとに,オンラインデータから復元された低解像度の筆跡画像の筆者識別実験を行い,識別精度を向上させるための画像処理手法について検討する.また,オンラインで取得した,筆圧変化と書字速度のデータおよペン先位置データを統合して筆跡画像を復元し,復元した画像を用いて畳み込みニューラルネットワークによる筆者識別実験を行う.今年度は,タブレットの署名筆跡の収集と種々のニューラルネットワークを用いた筆者識別実験を行いたい. また,手書き文字認識や法科学,文字データベース,古文書の文字認識,音符や記号の認識など文字に関する多様な領域の研究者の学会(ICFHR)の学術集会の研究発表論文がアクセプトされたので,発表を予定している.その他,文字認識,心理学,法科学などの分野の学術集会に参加し,最新技術や研究動向の調査や研究者との情報交換を行いたい.
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Causes of Carryover |
当初は被験者を募集して実験を行い,成果発表を次年度に予定していたが,令和元年度に国際学会に出席して情報収集と成果発表を行うように方針を変更し,これまでに収集した筆跡データを使用して実験を行い,タブレット筆跡データ収集を次年度以降に行うように方針を変更したため. 令和2年度は,筆跡データを使用した実験を継続するが,計算処理が複雑になるため,パソコンを整備する予定.また,実験参加者を募集してタブレット筆跡の収集,文字認識関係の国際学会への参加,心理学や法科学関係の国内学会に参加する予定.
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