2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a on-line signature verification system
Project/Area Number |
19K04940
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
関 陽子 科学警察研究所, 法科学第四部, 特任研究官 (10356157)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 筆者識別 / 法科学 / オンラインデータ / オフラインデータ / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
法科学における筆者識別では,伝統的に筆跡の「画像」としての特徴から個人性を抽出してきた.この手法では,字画の長短や位置関係などの「画像」としての特徴だけでなく,字画線の濃淡や転折部の曲直などから抽出した同一筆跡内の相対的な筆圧や書字速度などの書字中の運動情報の個人性についても,筆跡の観察結果から得られた知識の蓄積に基づいて利用している.しかし,書字運動についての情報は,観察結果に基づいた感覚的な情報に基づくものが多く,体系化が困難である.一方,現代社会においては,伝統的なペンを使って紙に書くという筆記の機会が減少し,タブレットに指や専用ペンで筆記する機会が増加している.タブレット筆跡は,タブレット上のペン先位置を一定時間ごとに測定したペンの「軌跡」であるため,オフラインの「筆跡」とは厳密には形状が異なっている.一方,タブレット筆跡は,書字中の運動情報をオンラインで取得できるので,字画線の形状や濃淡・幅などと運動情報の関係を明確にできる.オンラインデータを利用した筆者識別手法を開発することにより,将来さらに機会が増加することが予想されるタブレット筆跡の筆者識別が可能になるとともに,筆跡と書字中の運動情報の関係が明確になる.そこで,本研究では,伝統的なオフラインデータによる筆者識別手法とオンラインデータ処理の融合を図り,オンライン筆跡の筆者識別手法の開発を目指した.令和3年度は,オンラインで取得したペン先位置データと書字速度データを使用して筆者識別実験を行った.筆者識別手法は,令和2年度に行った,筆圧変化とペンの軌跡を使用した筆者識別と同様であるが,筆圧変化にかわって書字速度データを使用した.書字速度の表示は,ペンの軌跡上に5段階に分けた書字速度を色分けすることによった.深層学習により10人の筆者の筆者識別を行った結果,正答率は約61%で,筆圧変化に比較して正答率が低かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
筆者識別実験に使用した文字列は,単独で記載した文字を組み合わせて作成したものであったので,文字列を記載したデータにより筆者識別実験を行う予定であったが,コロナ禍により筆跡データ提供者の募集ができなかった.また,オンラインデータとオフラインデータを同時に取得できる装置を使用してデータを取得する予定であったが,装置が老朽化により故障して使用不可能になった.以上の理由により当初予定していた実験が行えなくなったので,実験計画を見直さなくてはならなくなった.
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Strategy for Future Research Activity |
データ提供者の負担を考え,取得するデータの量を減らしてデータ取得を行う.ただし,データ取得を予定していた機器が老朽化により使用できなくなったので,代替の装置としてタブレットを使用することとし,タブレットによるデータ取得を行う.データ取得用機器の変更により,データ取得方法を考案する必要がある.また,タブレットでは,文字の大きさや傾きを統制できないので,データ処理方法の見直しも必要である.さらには,タブレットでは,いわゆる筆跡が取得できないので,オフラインデータの取得方法についても考案する必要がある.これらの問題に対処したうえでデータ取得を進め,データを解析する.新たな実験ができない場合は,取得済みのデータを使用して実験を行う.研究の最終年度であるので,これまでの研究成果をまとめる.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,データ提供者の募集が行えなかったことと,データ収集用機材が老朽化して使用不能になったことにより,データ収集が行えなかったため次年度使用額が生じた.代替のデータ収集機材を整備するとともにデータ提供者の募集を行ってデータ収集を行う.また,これまでの研究成果をまとめ,海外も含めた学会での成果発表(旅費,学会参加費など)や,学術誌への研究成果の投稿(校閲費用,投稿料など)を予定している.
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